【ゲーム依存】使用時間減「治療キャンプ」の中身 「乳幼児に動画を見せる」問題を専門家が言及

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続いて、乳幼児のネット使用について、樋口医師に聞いた。

ぐずっている赤ちゃんにスマホで動画を見せたら、ピタッと泣きやんだりすることから、親が見せているケースが多い。最近はキッズ用のデバイスやアプリが豊富で、子どもが使うことに抵抗を感じない親も増えているのではないだろうか。しかし、「早くからデジタルデバイスを使いはじめると、将来的に依存のリスクは高くなる」と樋口医師は警鐘を鳴らす。

脳が未発達の子どもには自己制御は難しい。しかも、小さいお子さんが動画を見て喜ぶという脳の仕組みのなかに、依存のメカニズムが潜んでいる可能性がある。

ネット依存で起こる脳の変化

ネット依存によって、脳ではどんな問題が生じるのか。大きく分けて形態(かたち)と機能(働き)の2つの変化が生じることがわかっている。

まず形態についてだが、前頭葉(思考や判断、行動の機能をつかさどる部分)の神経細胞が減ってくる可能性が示されている。機能については、アルコールや薬物依存と同様、前頭葉の約30%をしめる前頭前野の働きが低下してくる。その結果、自己の感情などを制御する力が落ち、依存している対象物(酒やギャンブル、ゲーム)を想像させるものをみると、脳の報酬系の関係する線条体が強く反応し、強烈にやりたくなる。

こうした依存のメカニズムができあがったまま成長すると、ほかのものに依存する可能性が高まるという指摘もある。

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「ネットの使い過ぎが脳の神経細胞の脱落につながるという論文も出始めています。中国の論文では健康な人に比べて、ネット依存の子のMRI(核磁気共鳴画像法)を撮ると、左脳の神経細胞が脱落しているという報告もあります。またネット依存が重度で期間が長いほど、脱落の大きさが増すとされています」(樋口医師)

子どもが好きなもの、夢中になれるものは何か。モバイル端末で動画を見せなくても子どもが楽しめるものを探すことができれば、将来的な依存のリスクを減らすことは可能だ。

ネットやゲームより大切なものが見つかって、依存から抜け出した子どもを樋口医師はたくさん見てきている。ネットが悪いわけではない。うまく付き合うこと、意識してコントロールしていくことが大事だといえる。

(取材・文/熊本美加)

関連記事:【ゲーム依存】なる子とならない子の決定的な差

樋口進医師
国立病院機構久里浜医療センター名誉院長・顧問
樋口進医師

東北大学医学部卒業。アメリカ国立保健研究所留学、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの副院長、院長を経て現職。主な著作に『ゲーム・スマホ依存から子どもを守る本』(法研)、『Q&Aでわかる子どものネット依存とゲーム障害』(少年写真新聞社)など。
東洋経済オンライン医療取材チーム 記者・ライター

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