私が「ヒラ社員」だった頃は、仕事終わりに同僚たちと連れ立って、居酒屋へと向かいます。酒も入って盛り上がるのは、たいてい上司の話題です。
「なぜ、あそこで正しい判断ができないのか」
「なんで、あんなに人を見る目がないのか」
正直なところ、こうした「悪口」の類も少なくはありませんでした。上司には、なぜか自分自身のことは棚にあげ、一方的に「絶対的な正しさ」や「圧倒的に高い能力」を求めてしまっていたのです。
ですが自分が初めて管理職になって、当たり前のことに気がつきました。「上司も1人の悩める人間」なのだ、と。すべてを見通す眼を期待するほうが無理なのです。
ギネスブックに「世界で最も売れた男性グループ」として認定されている、かのビートルズですら、大手音楽会社のオーディションで「不合格」の烙印を押されたことがあるのです。ビートルズほどの才能があっても、最初はプロから認められず価値に気づかれなかったのです。
人は誰しも自分の考えを「正論」だと思っている
さらに厄介な問題があります。それは「評価される人」も「評価する人」も、両方が自分の考えを「正論」だと思っているということです。
「正論」と「正論」が戦うと、どうなるか。これは圧倒的に「評価される人」のほうが不利な戦いです。
なぜ、「圧倒的に不利」といえるのでしょうか。それは自分の考えが正しいことを証明しなければならないのは、いつも「評価される人」のほうだからです。
「どうしてそう思うのか」
「根拠は何か」
「データはあるのか」
立場が圧倒的に強いのは「評価する人」。立場の強さを生かして、相手の「正論」を打ち砕くため、ひたすら質問を投げ掛けることができます。
「評価される人」はその果てしない質問を受け続け、延々と答え続けなくてはなりません。1つでも言いよどんだら、そこに付け込まれてしまいます。そもそも最初から勝てる勝負ではないのです。
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