物流トラック向け自動運転システムの開発を手がける、中国系スタートアップ企業のTuSimple(漢字の社名は「図森未来」)。同社は2022年12月21日、社員350人の削減を含む事業再編計画を発表した。人員カットの規模は全社員の4分の1に相当し、8割が研究開発部門の所属だという。
事業戦略の見直しに関しては、大手物流会社と積極的にパートナーシップを組むことで自動運転技術の実用化を進める方針だ。TuSimpleの説明によれば、同社は物流トラックの自動運転技術のリーディング企業であり、今後は(パートナーと共同で)システムの実地検証と収益モデルの確立に重点的に投資するとしている。
なお、同社のウェブサイトにはパートナー企業としてアメリカ物流大手のUPS、DHL、USエクスプレス、シュナイダー・ナショナル、ユニオン・パシフィック鉄道などの社名が記載されている。
「現在の経済環境の厳しさは秘密でも何でもない。われわれは(手元の)資金を慎重に使い、できる限り効率的な経営に努めなければならない」。TuSimpleのCEO(最高経営責任者)を務める呂程氏は、リストラ発表の声明のなかでそう述べた。
技術やデータの漏洩に懸念
TuSimpleは2015年にアメリカで創業し、2021年4月にナスダックへの上場を果たした。だが、主要株主や経営陣が中国系のバックグラウンドを持つことから、アメリカ政府の対米外国投資委員会(CFIUS)の調査対象になっている。
CFIUSは、TuSimpleの大株主が中国のネットサービス大手、新浪(シナ)の経営トップである曹国偉氏が支配する投資会社であることや、事業活動を通じてアメリカの技術やデータが中国に漏洩するリスクなどに懸念を示した。それを受け、新浪系の役員はすでにTuSimpleの取締役会から退き、業務に関してはアメリカ事業と中国事業の分離を進めている。
同社の2022年7~9月期の決算報告書によれば、同四半期の売上高は270万ドル(約3億5658万円)と前年同期比50%増加した。一方、純損益は9360万ドル(約123億6147万円)もの赤字であり、損失額が前年同期比15%拡大した。
TuSimpleは2022年9月末時点で10億7000万ドル(約1413億1169万円)の現金、現金等価物、短期投資商品を保有しており、直ちに資金ショートに陥る可能性は低い。とはいえ収益モデルを早期に確立しなければ、ジリ貧に陥りかねない。
(財新記者:余聡)
※原文の配信は2022年12月22日
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