中国の新興EV(電気自動車)メーカーの理想汽車は12月9日、2022年7~9月期の決算を発表した。同四半期の売上高は93億4200万元(約1829億円)と、前年同期比20.2%増加。しかし純損益は16億4600万元(約322億円)の赤字となり、損失額が前年同期の2150万元(約4億円)から大きく膨らんだ。
理想汽車の販売車種は長らく「理想ONE」(訳注:2019年末に納車を開始したレンジエクステンダー型EV)の1車種だけだったが、2022年6月にようやく2車種目の「L9」を発売した。ところが、それを境に理想ONEの受注が急減。慌てた同社は9月30日、理想ONEの後継車種「L8」を前倒しで発売するとともに、3車種目の「L7」の投入もアナウンスした。
7~9月期の決算報告書によれば、理想汽車が販売したEVの1台当たり粗利益率は前年同期が21.1%だったのに対し、今四半期は12%に落ち込んだ。 同社はその理由について、L8の発売前倒しにより理想ONEの関連在庫の評価損が約8億300万元(約157億円)発生したためと説明。この影響を除外すれば、今四半期の粗利益率は20.8%だったとしている。
10月以降の販売は回復
販売実績に目を移すと、理想汽車は7~9月期に2万6524台を出荷。前年同期比では5.6%増加したものの、直前の4~6月期の2万8687台より減少した。とはいえ、10月以降は(新型車の)L9の出荷が安定し、L8もラインナップに加わったことで、販売は回復に転じている。10~12月期の販売台数について、同社は4万5000台~4万8000台と予想する。
注目されるのは、理想汽車が決算と同時に発表した人事で、謝炎氏のCTO(最高技術責任者)就任を明らかにしたことだ。謝氏は直近まで、中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)でコンシューマー製品部門のソフトウェア開発部隊の幹部を務めていた。
(訳注:ファーウェイの自動運転技術の開発部隊はコンシューマー製品部門の傘下に置かれている)
近年の自動車業界では、EVの競争力の決め手は「スマート化」にあるとの考え方が主流になり、ソフトウェア開発の重要性が高まっている。理想汽車が謝氏をCTOに迎えた背景には、ソフトウェアの自社開発能力を高めて技術の独自性を担保し、EVの競争力強化を図る思惑が見て取れる。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は12月10日
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