25年間「英語辞典"一筋"」だった彼の驚きの現在 なぜ50代にして「キン肉マン図鑑」を作ったのか

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現在はコンテンツ戦略室という、社内のやり手編集者が集まる部署で室長を務める52歳の芳賀氏だが、40代から新たな挑戦を続けてきたそのキャリアを自身ではどう振り返っているのか?

「辞典や図鑑の業界は厳しい状況が続いていますが、業界的に試練に見舞われるような時期をキャリアの前半で経験し、そんな中で辞典をつくり続けた日々は自分のとって大きな糧となっていると思うんですよね。ただ正直なところ、『せっかく中学から夢だった編集者になれたのに、自分の編集者人生このまま終えていいのか?』という気持ちもずっと強くありました。

だから、うちの会社では管理職になると本づくりから離れてマネジメントに専念することが多いんですけど、自分はそこで足を洗うのが嫌だったんです。もちろん偶然にも恵まれて少しずつ手応えを感じる仕事ができるようになったわけなんですけど、私の場合はプレイングマネージャーとして本づくりにしがみついたことが、結果的によかったのかなと思っています」

管理職になることでプレイヤーとしても成長を遂げた

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芳賀氏のように、プレイングマネージャーとして働く人は少なくない。だが、「現場」と「マネジメント側」はどうしても対比的に語られがちだし、「マネジメント的視点は現場の先にある」と考えられるものだ。

しかし、芳賀氏の場合は管理職になったことで、より広い視野や新しいビジネス視点を得たことが、書籍作りにも生かされた。

「管理職向けの研修を受けていく中でビジネス書なども読みましたが、自分ごとに置き換えて読むのがけっこうおもしろかったんですよね。立場的にも自分が辞典編集室を建て直すという問題にリアルに直面していて、IPのライセンス契約をする決断などもそうですが、自分の裁量と権限で、学んだビジネススキルを試行錯誤できたので。

長い下積みでしたが、結局ちょうど機が熟したのが私の場合は40歳になってからだったんだと思います。今はジャンルに捉われず自分たちが興味のあるものにどんどん挑戦しておもしろいコンテンツづくりを行っていくような部署にいるんですが、辞典づくりがベースにある自分だからこそできる本を今後も生み出していけたらと思っています」

(撮影:今井康一)
伊藤 綾 フリーライター

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いとう・りょう / RYO ITO

1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュースなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii

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