クラッシャブルゾーンを大きくとったロングノーズは、同時にかなり低めに見せている。そこに収められたのは、マツダの伝家の宝刀、ロータリーエンジンだ。
しかも、パワフルな2ローター「13B」(230馬力)に加え、新開発の3ローター「20B」(280馬力)も用意。当時は280馬力の自主規制があったため、日産自動車「フェアレディZ」「スカイラインGT-R」、ホンダ「NSX」、三菱自動車「GTO」などと並ぶ「国産最強エンジン」を載せた車の1つだった。
2基のロータリーエンジンは、ともに「量産車世界初」とメーカーがうたったシークエンシャル方式のツインターボチャージャーを装着していた。
「量産車」としているのは、最初に採用したのが、ポルシェ959(1986年)だったけれど、こちら、292台しか作られなかったレース車両のためのホモロゲーションモデルだったから。
シークエンシャル方式とは、小さめで効率のよい1次ターボチャージャーを低回転域で回して、エンジン回転が上がったときは大きめの2次ターボチャージャーを回すという機構。
上の領域までエンジン回転を上げて走らせることで、強烈なターボパワーを発揮するのを本領とするシステムだ。
おとなしい街乗りなど、ターボの切り替わりなどにぎくしゃく感があるなど、マイナスの評価をするオーナーもいた。
“男の気概”を呼び覚ます
「私が成したいことは唯一、クルマを通して”男の気概”を呼び覚ますことである」
こうプレス資料に記していたのは。当時の山本紘開発主査。
「エンジンはあくまでも力強くエネルギーに満ちていなければならない」
マツダは1970年を振り出しに、1980年代に入って本格的にルマン24時間レースに参戦。1991年には総合優勝を成し遂げる。
マツダが用意したホームページで、同社の歴代ルマン・プロトタイプを概観すると、必ず車名とともにエンジン型式が記載されている。
もちろんシャシーやボディ空力など、総合的な出来のよさがレースでの好成績の条件だけれど、やっぱりマツダのこだわりはエンジンなのだと納得させられる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら