「伊丹十三作品」がネット配信されない深い事情 「お葬式」「マルサの女」遂に4Kリマスター化

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巨額の脱税犯との攻防戦が見どころにある「マルサの女」などが「伊丹十三劇場4K」特集として1月21日から日本映画専門チャンネルでレギュラー放送される(写真:伊丹プロダクション)

伊丹プロダクションの現社長で伊丹監督の次男、池内万平氏は「前田カメラマンは伊丹さんがどういう意図でどう撮るかが身体に染み込んでいる方でした。ご高齢のため大事を取りながら徐々に進めていきましたが、『この色味なら大丈夫』といった判断ができるのは心強かった」と、1年越しの作業を振り返り、日本映画放送の宮川朋之常務執行役員も「多くの伊丹作品を手掛けた前田カメラマンの協力がなければ、伊丹作品の本質を継承する4Kリマスター化は実現できなかった」と打ち明けます。4Kリマスター版の完成後まもなくして、前田カメラマンが亡くなったこともあり、余計に感慨深げです。

完成した4Kリマスター版はさっそく、2022年のサン・セバスティアン国際映画祭(スペイン)と台北金馬映画祭(台湾)で上映されました。さらに2023年の年明け早々、1月8日に日本映画専門チャンネルで全10作品が初放送されたところです。

10作品のすべての権利を保有する

過去の名作の数々を気軽に動画配信サービスで視聴できる今、4Kリマスター化された伊丹作品も楽しみたい。そんな声は当然あるはずですが、今のところ配信される予定はありません。しかも、過去作によくある権利処理の関係で配信できないという理由ではなく、IP(知的財産)ブランディング戦略によるものです。

どのような戦略なのでしょうか。日本映画放送の宮川常務は「いつだってNetflixにもAmazonプライム・ビデオにも作品を出せる条件はそろっていますが、有料放送や劇場のスクリーンでしか見ることができない“不便さ”を戦略としています。伊丹作品に11作目はありませんから、全10作品をいかに大事にお客さんに届けるかを考え抜いた結果です」と説明します。

食と性をテーマにする「タンポポ」は海外で高い評価を得る作品の1つにある(写真:伊丹プロダクション)

要は不便さを押し出すことで、作品の希少性を高める狙いです。動画配信サービスの普及に伴い、ユーザーが選べる作品数は圧倒的に増え、さらに世界的にコンテンツが次々と大量生産されている状況をみると、過去作は埋もれがちになります。それを避けるために、流通手段を慎重に選択したと言えます。

加えて、伊丹プロダクションが10作品すべての権利を保有する特殊な事情が独自の戦略を導き出しています。同じ監督作品でも作品ごとに権利元が異なるケースが多いなか、伊丹作品は伊丹プロダクションが一括管理する仕組みを作り上げています。池内社長曰く、「映画製作の当初の段階からチラシであろうと広告であろうと自分たちの作品としてコントロールし、映画スチール写真まですべて買い取っていた」とのこと。

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