伊丹十三が遺した全10作の監督作品が4Kデジタルリマスター化され、再び視聴できる機会が国内外で広がっています。脱税犯との攻防戦をシニカルに描く「マルサの女」など没後25年以上が経った今でも伊丹作品の人気は衰えていません。
ただし、有料放送と劇場上映に限られます。いつでも作品を楽しめる時代にあえて配信しない方針を打ち出しています。そこには「不便さ」で攻める戦略があります。
伊丹十三作品4Kリマスター化計画
人間模様の描き方が巧みな1984年のデビュー作「お葬式」から、90年代後半にかけて公開された伊丹十三の作品数は全10本に上ります。そのすべての作品を最新のデジタル技術によって甦らせようと、日本映画専門チャンネル等を運営する日本映画放送が4Kリマスター化計画を主導し、コンテンツホルダーの伊丹プロダクションの協力のもと、コロナ禍直前の2019年から進められていきました。
技術力の向上と低コスト化によって、過去作のリマスター版は当たり前になりつつあります。一方で、色調補正のやり方次第では作品の印象が大きく変わるリスクもあります。作り手の意図が反映されなければ、「蘇った」とは言い切れない作品にもなり得ます。ましてや、人気の伊丹作品です。「今こそ見たい!日本映画の巨匠」ランキング(朝日新聞調べ、2022年5月発表)では小津安二郎、黒澤明を抑えて1位を獲得するなど期待値は高く、裏切れません。
技術面のみならず、作品性を損なわないクオリティが求められるわけですが、伊丹作品を4Kリマスター化するにあたり、全体監修を担った前田米造カメラマンの存在は大きかったようです。
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