岸田首相、逆境でもしたたか「政権維持」戦略の中身 「どうする家康」ならぬ「どうする文雄」に注目
岸田首相は4日の年頭会見やその前後のメディアインタビューなどで、防衛費増額のための増税を実施するまでの解散断行も示唆した昨年末の自らの発言を、以下のように微妙に軌道修正した。
「税が上がる前に選挙があることも日程上、可能性の問題としてありうるということを申し上げた。解散・総選挙については、専権事項として時の総理大臣が判断するものであると認識をしている」。
与党幹部の多くは、「時の総理大臣が判断するもの」という岸田首相の言い回しに注目した。「来年9月末の自民総裁としての任期中には解散しない可能性を示唆したようにも受け取れる」(自民長老)からだ。
そもそも政界では、「岸田首相は来年9月までの間の解散断行で、総裁再選を狙う」(自民幹部)と判断が定着している。ただ、その前提は「現職首相は誰もが長期政権を目指す」との“政治的常識論”だ。しかし、岸田首相が就任時から「3年間の任期完投後の勇退」を心に秘めているとすれば、「状況は一変する」(岸田派ベテラン)ことになる。
自らの優柔不断が原因での政権運営迷走による支持率低下で苦悩し続ける岸田首相が、昨年暮れから連続的にぶち上げた防衛増税、原発再稼働などは「国民の猛反発で国政選挙での自民敗北に直結する政治決断」(閣僚経験者)だ。これについて周辺からは「任期中の解散を見送ることで、難題解決を目指す戦略」(側近)との声も漏れてくる。
もちろん、「岸田首相自身がその考えを公にした途端、レームダックになって政権維持は困難になる」(自民長老)のは確実。だからこそ「岸田首相は与党内で早期解散論が飛び交うように、さまざまな発言を繰り出して求心力を維持する戦略」(同)との見方が浮かぶのだ。
「どうする文雄」が最大の見どころに
岸田首相は5日夜、森山裕・自民党選対委員長と都内で密談し、衆院小選挙区「10増10減」を巡る党内の候補者調整に関し、「統一地方選前にできるだけ決めることが大事だ」と選定作業加速を指示したとされる。ただ、これについても「岸田首相の陽動作戦では」(自民若手)と勘繰る向きもある。
今年のNHK大河ドラマは、徳川家康の生きざまを描いた「どうする家康」。昨年末のメディア出演で好きな歴史上の人物を問われた岸田首相は「かつては徳川家康がすごく好きだったが、今は誰が好きかと聞かれると困る」と笑顔を交えながら思わせぶりな口調で語った。
「解散するのかしないのか」「任期完投であっさり勇退するのか」……。どうやら、「どうする文雄」が今年の岸田首相の政局運営の最大の見どころであることは間違いなさそうだ。
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