岸田首相、逆境でもしたたか「政権維持」戦略の中身 「どうする家康」ならぬ「どうする文雄」に注目

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4年8カ月の外相経験を持つ岸田首相にとって、今年5月の広島サミットでのG7リーダーとの首脳外交は、「存在アピールのための晴れ舞台」(外務省幹部)。周辺も「G7で成果を挙げて内閣支率も上向けば、解散断行のチャンス」(岸田派幹部)と肩を怒らす。

しかし、そこにたどり着くまでに、多くの政治的関門が立ちはだかる。まず、岸田首相の「説明力」が問われるのが1月23日召集の次期通常国会での与野党論戦だ。

政府は過去最大規模の114兆円超の2023年度予算案を提出し、年度内成立を期す。対する野党側は、昨年末の秋葉賢也前復興相の“更迭”などでの首相の任命責任を厳しく追及し、防衛費増額やそのための増税など首相が決断した重要政策についても、徹底論戦を挑む構えだ。

一方で、世界的な景気後退が深刻化する中、経済再生を掲げた当初予算の早期成立には野党も抵抗しにくく、「結果的に国会前半戦は順調に進む」(自民国対)との見方も少なくない。

統一選と衆院補選で自民退潮なら「サミット花道論」も

そうした中、岸田首相サイドが強い危機感を持つのは4月の統一地方選(9日・23日投開票)だ。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題の影響で自民苦戦が予想されていることに加え、23日には衆院統一補欠選挙として、衆院の千葉5区、和歌山1区、山口4区で補選が実施される見通しで、それぞれの選挙結果で自民退潮が際立てば、与党内の“岸田離れ”が急拡大する可能性があるからだ。

その場合、自民党内で「サミット花道論」が急浮上しかねない。これに対し岸田首相は、時期を見極めての大幅な党・内閣人事断行や、「早期解散」をちらつかせることで、政権危機回避を狙うとみられている。

岸田首相はその前提として、「解散など考えずに、首脳外交や物価高騰・コロナ対策などで地道に成果を積み上げての支持率回復」(側近)を目論む。そのうえで自民党総裁任期切れまで残り1年となる9月以降も「政権安定化に向けての求心力を維持することで、まずは“任期完投”の戦略を模索する」(同)との見方が広がる。

こうしてみると、今年以降の政局は、岸田首相がいつ解散に踏み切るか、それとも(自民党総裁)任期中の解散回避を決め込むのかで、展開が大きく変わることになる。

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