米FRB(連邦準備制度理事会)は3月17~18日に開催されたFOMC(公開市場委員会)で、利上げに対して、"patient"(忍耐強くなれる)という表現を削除して、利上げがそう遠くはないことを示した。
ドルの独歩高で国際収支のバランスが再び悪化
一方、アメリカ以外の国々では金融緩和が強化される方向にある。例えば、日本は消費税率引き上げの影響がなくなる4月以降は、消費者物価上昇率がマイナスに陥る恐れも大きい。日銀が掲げている2%の物価上昇率目標の達成にはほど遠く、追加緩和の可能性が漂っている。ギリシャやウクライナ問題に揺れる欧州でも、デフレ懸念からECB(欧州中央銀行)が量的緩和政策に踏み切った。このため、ユーロや円はドルに対して下落傾向となっている。
ECBの金融緩和は、経済的な関係の深い周辺国にも波及している。スウェーデン中央銀行は、2月に量的緩和策とマイナス金利を導入し、デンマーク中銀は1月中に立て続けに利下げを実施しただけでなく、海外からの投資対象となる国債の発行を一時停止するという異例の措置に踏み切った。
中国は昨年11月に続いて3月にも追加利下げを行い、シンガポール通貨庁(MAS)は1月末に金融緩和に踏み切った。カナダやインドも利下げしたなど、原油価格の下落でインフレ圧力が緩和したことを利用して金融緩和に踏み切った国は多い。
各国の金融緩和は、表向きは国内景気や物価上昇率の低下に対応する措置とされているものの、事実上は為替レートの引き下げや上昇の防止を意図したものであることも多く、こうした状況を「通貨戦争」と呼ぶ人もいる。アメリカ経済が他の国に比べて相対的に好調を続けて利上げに踏み切れば、さらにドル高が進み、アメリカの国際収支(経常収支、資本収支、外貨準備増減)のバランスを悪化させるだろう。
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