若い世代の負担を軽くするためには、年金を初めとする社会保障給付の抑制が必要だ。しかし、単純に年金の支給額を減らせばよいというものでもない。年金所得が減少したときに蓄えが十分でなければ、生活保護を受ける高齢者が増えるという問題もある。
実際、生活保護世帯数は2012年度には150万世帯を超えているが、そのうちの4割以上が高齢者だ。1975年度から2012年度までの間に生活保護世帯は85万世帯増加したが、そのうちの半分以上にあたる46万世帯が高齢者である。
年金を支払うのに代えて、高齢者に仕事をしてもらい給料を払うというのはどうか。高齢者の方々は、自分が払った保険料はどうなるのかと怒り、若い世代は負担が減らないことを心配するだろう。暴論であることは承知しているが、どのみち高齢者が生活できるだけのお金を支給しなくてはならない。高齢者が働けば、その分だけ日本の生産は増えるのだから、若い世代の負担が増えることはないという勘定だ。
人手不足は景気が悪化しても続く
これまで本欄でこの話を持ち出すのを控えていたのにはワケがある。失業率が高いので、多くの高齢者が働くと若者が失業してしまい、日本の生産が増えるとは限らないという反論が予想されたからだ。しかし2014年12月の失業率は3.4%に低下し、有効求人倍率は1.15倍に上昇して、日本経済は人手不足の様相を濃くしている。
日本の人手不足問題は景気の回復によるもので、景気が悪くなればまた企業は簡単に人が雇えるようになると思っている人も多いが、本欄「日本で人手不足経済化が進む」で解説したように、構造的な要因が大きく、景気が悪化しても簡単には解消しない可能性が大だ。
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