高齢者が働けば、全体の生産性は上がる 年金を減らせて若い世代の負担も軽くできる

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2012年3月をピークに2012年11月まで景気は後退したが、この間有効求人倍率は上昇傾向を続け、失業率も低下傾向が続いた。景気後退期が短期間だったということもあるが、景気が悪化したにも関わらず雇用情勢は悪化しなかった。これなら多くの高齢者が働いても若年の失業問題が深刻化することは避けられるだろう。解決すべきことは、高齢者に仕事があるかどうかという問題だ。

サミュエルソンの分業の例え

さて、筆者が経済学の勉強を始めた頃は、サミュエルソンの「経済学」が標準的な教科書だったが、この中にタイプの得意な弁護士と秘書の話があった。今では、個人が各自、パソコンで文書を作成するようになったので、ほかの例を挙げた方がよいのかも知れないが、まだ分かっていただける人も多いだろう。

話はこのようなものだ。弁護士はタイプが得意で、秘書を雇わずに自分でタイプした方がずっと早くてきれいにできる。しかも自分でタイプすれば秘書に給料を払わなくて済むのだから経費の節約になる。しかしサミュエルソンは、そう考えるのは早計で、弁護士は秘書を雇って手書き原稿のタイプ打ちをさせて、自分は弁護士業務に専念すべきだと教えていた。この話は分業の重要性と、貿易が国際分業の仕組みであることを説明するために出てきたと記憶している。

貿易が行われる理由として、それぞれの国が得意なモノを生産して交換するという説明は分かりやすい。例えば、人口が多くて土地の少ない日本は、自動車生産が得意で農産物の生産はコストが高い。人口が少なくて土地が多いオーストラリアは、農産物の生産コストが安く人手のかかる工業製品のコストが高くなる。そこで、日本はオーストラリアに自動車を輸出して、オーストラリアから農産物を輸入するというものだ。

理解しやすいが、この説明では、すべての製品について他国よりも生産性が低ければ、何も輸出するものがないように思える。しかしそれは誤りで、必ず輸出するものがあるというのが貿易を支えている比較優位の理論だ。比較優位を唱えたリカードが示した例を使って説明しよう。

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