セルジオ越後が、日本サッカーをなで斬り! 「誰が代表監督になっても、変わらない」

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――では、日本代表の成長、レベルについては、どのように感じていらっしゃいますか?

まず勘違いしていけないのは、そもそも日本代表はそれほど強くなっていないということ。1993年のアメリカW杯の予選で日本は敗退した。ドーハの悲劇ですね。

このとき、本大会の出場チーム数は24で、アジアの枠は2。日本は3位だったから行けなかった。その後、1998年のフランスW杯から32チームが出場できるようになって、アジアの出場枠も増えた。その恩恵を受けたから、日本はW杯に出られたわけで、24チームのままならフランスにも、南アフリカにも行けていない。そこをまず自覚すべきです。

日韓W杯後、完全に変わってしまった協会

もうひとつは、2002年の日韓W杯を迎えるまで、日本サッカー界はすごくエネルギーがあったんですね。プロリーグを成功させたい、ワールドカップに初出場したい、地元開催のワールドカップを成功させたいということで、目標や理念を掲げ、どうやって実現させるのか議論して、工夫しながら一丸となって突き進んでいたわけです。

でも、日韓W杯が終わって、ひと昔前には考えられないぐらいのお金が集まった。そうしたら、どうなったか。味をしめたのか、なんでもかんでも興行が優先されるようになり、予算の無駄遣いが始まった。

日本サッカー協会の自社ビルを購入し、これまで名誉職だった会長に給料が支払われるようになり、組織がどんどん拡大し、権力が一部に集中するようになった。当時の会長、川淵三郎さんを中心とした体制のことですね。

そうした体制に意見を言った者は追い出され、事実上「イエスマン」ばかりになって人材不足になった。協会内のポジション争いもなくなり、お友だち人事や、ポストの順番待ちが当たり前の状態になり、それが今の、誰も責任を取らない体質を生んだんだと思います。

――現状では、会長選挙もありませんね。

今の日本サッカー協会の会長は、事実上、黙ってお行儀よく順番待ちしていた人物に回ってくるポストになっている。順番が回ってきたときには、定年まであとわずかという年齢。これでは、つつがなく過ごし、任期をまっとうしたい、という心理になるのも日本の社会では当然でしょう。

理事会も機能しているとは言いがたいですね。先日のハリルホジッチ監督の就任会見がその良い例でしょう。3月12日の理事会で承認され、その日のうちにハリルホジッチ監督はフランスを発ち、13日の夕方には日本で就任会見が開かれた。

この手際の良さは、いったい何を意味するのかと言うと、理事会で反対意見が出るなんて、あり得ないということ。ハリルホジッチ監督の就任はすでに決まっていて、理事会は形式だけのものになっているということでしょう。

――理事会で議論して意見が分かれることはない、と。

昔、川淵さんが会長だった頃、「理事会ではどういう話し合いをしているですか」って訊ねたら、「決めているのは理事会じゃないよ、幹部会で決まったんだ」って言われました。わかりやすいですね(笑)。

理事会では幹部会が決めたことがただ報告されるだけ。みんな、それをうなずきながら聞いて帰るだけなんじゃないですか。

でもね、僕は問題はサッカー協会だけじゃなくて、日本のマスコミの責任も大きいと思っていますよ。(第2回に続く)

飯尾 篤史 スポーツライター

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いいお あつし / Atsushi Iio

東京都出身。明治大学卒業後、サッカー専門誌の編集記者を経て2012年からフリーランスに転身、スポーツライターとして活躍中。『Number』『サッカーダイジェスト』『サッカーマガジン』などの各誌に執筆。著書に『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成に岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(ベスト新書)などがある。

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