とはいえ、こうした芸能界の「ネポベイビー」たちにまったく実力も個性もなければ、いずれ、活躍の場を失う可能性があります。
一方で、何の実力も実績もないのに、「2世」というだけで、民主主義の根幹となる枢要なポジションを得ている特権階級の人たちもいます。それが日本の「政界ネポベイビー」たちです。
1960年では、世襲議員の割合は「全体の約3%」だった
安倍晋三元首相の弟の、岸信夫前防衛相は先日、次期衆院選に立候補しない意向を固めましたが、「後継には長男を充てる」と伝えられています。
「選挙も経ずに『後継』とは何ぞや」という気持ちになりますが、岸田文雄首相も、政治経験のまったくない、長男を総理秘書官に起用したことが話題になりました。
同志社大学の飯田健教授らの論文によれば、「世襲議員は国会議員全体の約3分の1を占める」とのことで、「オーストラリア、韓国、イギリス、アメリカなどの民主主義国家では(世襲比率は)5~8%」(ジャパンタイムズ)と比べても圧倒的な高さ。
「平成以降の総理大臣の7割が世襲政治家」と、世界的に見ても、日本の政界は異形のファミリービジネスそのものといえるでしょう。
しかし、同論文によれば、世襲議員の割合は「1960年には全体の約3%と、非常に小さいもの」でした。
この「政界ネポベイビー」の増殖は、いわゆる「地盤・看板・かばん(カネ)」などの参入障壁の高さや、知名度がモノを言う「小選挙区制」の導入などの影響もあるようです。
世襲議員は地方に多く、「非世襲議員に比べて、当選回数が多く、出世しやすい」という特徴があります。飯田教授の論文などによれば、政界の行きすぎた縁故主義の「弊害」としては、次のようなことが挙げられます。
●2世以外の政界への参入が難しくなる
●有権者の政治への参加意識を低下させる
●政治家の多様性がなくなる
●有権者の選択肢を減らす
●世襲議員と対抗するために、対立候補はより地元利益誘導型の選挙を行うようになる
しかし、世襲議員の中にも「優秀な人材」がいるのも事実です。世襲議員には、次のようなメリットもあります。
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