子ども強制参加の「音楽鑑賞会」が残念すぎるワケ 大人の先回りが「子どもの成長機会」を奪う

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苫野:徹底してますね。

工藤:そうなんです。小学生くらいなら音楽鑑賞教室と聞いてみんな喜ぶんですけど、中高生になると明らかに興味を持たない子がいて、会場で寝るんです。お金も時間も使って興味のないことを強制させられるって、どう考えてもその子は置き去りじゃないですか。

そうしたらその教員が「いや、音楽に興味のない子でも音楽に目覚めるかもしれないじゃないですか」と、まるで日本の古い校長先生のようなことを言い出したんです。たしかにそういうケースはあるかもしれないけど、それで変化がなかった子は「置き去りにされた子」のままで、「誰一人置き去りにしない状態」にはなりません。

興味のない子でも強制参加させるべき?

苫野:若い教員の方はそれで納得されたんですか?

工藤:どうですかね(笑)。これに関連したことですが、僕は教員たちに「後悔」の重要性について話します。

以前、麹町中に『下町ロケット』のモデルにもなった植松努さん(植松電機)に来ていただいたとき、全員参加にすべきか、悩んだんです。というのも植松さんの講演って最高に面白いので、冷めている生徒でも最後には喜ぶだろうと思ったからです。でも最終的には講演を聴きたくない子のために別室を用意して、結果20人くらいは参加を希望しませんでした。

でも、講演が終わると講堂からみんな一斉にでてきて、「超、面白かった!!」と興奮した様子で歩いていくわけです。その歓声を聞いたら、別室にいた子たちもさすがに「うーん、やっぱり聞いておけばよかったな」と後悔するんですね。わざわざ誰かが「もったいなかったな」なんて言わなくても、大人が無理やり機会を与えなくても、子どもたちはちゃんと自分で葛藤して、学ぶんです。

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