小学校教師を「がんじがらめ」にする悪習の正体 教師の多忙は「もはや限界」を超えている
本記事のテーマは、子どもだけじゃなく「先生もつらい」です。日本の教師の多忙化や「ブラック部活動」の問題などは、今では世間でもよく知られるようになりました(2018年に行われた連合総研 第36回「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート調査」報告書によれば、保護者の約6割は教師の多忙を知っているとのことです)。
近年、教育学部の学生たちからも、気になる声が頻繁に聞こえてくるようになりました。「教師の仕事はブラックなんですよね?」。全国の教員養成学部の学生たちから聞こえてくる、不安の声です。何とかしなければならない、と切実に思います。教師の仕事を、もっともっと魅力的なものにしていかなければ、意欲と能力ある若者たちが学校現場からそっぽを向いてしまいます。
教師の労働時間は「世界最長」
2017年、文部科学省の調査により、週20時間以上の「過労死ライン」に達する残業をした小学校の先生は、全体の約3割を占めることがわかりました(中学校は約6割に上ります)。2013年に実施された、OECD(経済協力開発機構)による国際調査「国際教員指導環境調査」(TALIS)でも、教員の週平均労働時間は、加盟国平均の38.3時間に対し、日本は53.9時間と最長でした。
こうした現状を受けて、各地で「教師の働き方改革」が始まっています。わたしも、この問題については微力ながら世論や行政に働きかける活動を行ってきました。2018年には、教育社会学者の内田良さんとともに、教師の「ブラック残業」の根本原因の1つである「給特法」を批判し、その改正を求める本も出しました(内田良・苫野一徳『みらいの教育──学校現場をブラックからワクワクへ変える』)。
「給特法」とは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の略称で、教員に対して給料月額4%に相当する額を支払う代わりに、時間外勤務手当や休日勤務手当の支給を行わないとする法律です。実質上の、「残業代ゼロ法」と言っていいものです。
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