小学校教師を「がんじがらめ」にする悪習の正体 教師の多忙は「もはや限界」を超えている

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この法律がある限り、教師はその使用者(教育委員会・管理職)からすれば、残業代を払う必要なく「働かせ放題」となります。先生たちへの残業代の未払いは、年間9000億円にも上ると言われています(先の連合総研の調査によると、公立学校の教師の残業代がゼロであることを知っている保護者は、全体の4割程度とのことです)。

この法律が制定されたのは、1971年。当時に比べて、教員の残業はほぼ10倍に増えたと言われています。教師の多忙は、もはや限界を超えているのです。

全国の教師が求める待遇改善

給特法の改正を求める声は今、各地で大きく上がっています。インターネットの署名サイト「Change.org」上では、「子どもたちに教育の質を保障する為 ブラック残業の抑制を! 教員の残業代ゼロ法『給特法』を改正して下さい!」という署名活動も行われました。

この署名活動では、給特法を次のように改正することを求めています。

(1)やらざるをえない残業は残業と認める
(2)残業には、労基法で定められた残業代を支払う等、十分な措置をとる
(3)残業時間に上限を設定する
(4)部活動顧問については、教員の本来の業務ではないと明確にし、顧問をする・しないの選択権を保障する
(5)管理職が労務管理をしっかりと行う

子どもたちとの時間をもっと大切にしたい、よりよい教育活動に専念したいという、全国の先生たちの切実な訴えです。

以上のように教師の多忙の問題は、文字どおり“システム”の問題です。ただ本記事では、こうした給特法をはじめとするハード面のシステムよりも、よりソフトなシステムのほうに焦点を当てたいと思います。

すなわち、「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で」という、わたしがこれまで繰り返し述べてきた学校の慣習化されたシステムです。実はこのシステムは、子どもたちだけでなく、先生たちもまたひどく縛り付けているのです。

ある意味では、当然のことと言えるかもしれません。子どもたちに「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で」を要求する以上、先生たちにもまた、個性を生かした授業や学級経営などをやってもらったら困ります。

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