小学校教師を「がんじがらめ」にする悪習の正体 教師の多忙は「もはや限界」を超えている

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だから多くの自治体や学校では、先生の裁量がひどく制限され、文字どおり「言われたことを、言われたとおりにやる」しかない状況が続いています。その状況が、年々悪化しているように見える自治体や学校もたくさんあります。

教師たちを縛る「スタンダード」

その1つの象徴的な例が、「◯◯スタンダード」なるものです。すべての先生の授業の方法を統一し、時に「めあて」を何色のチョークで書き、「まとめ」を何色のチョークで囲むか、といったことまで決める授業スタンダードや、子どもたちの持ち物を統一し、時に机のどこにどの筆記具を置くかといったことまで決める学習規律のスタンダードなど。

かつてあれほど、日本の教育の画一主義が批判され、その反省から、多様性の尊重や個に応じた指導などが言われるようになったのに、いつしか多くの自治体や学校が、またぞろスタンダードという名の画一化に舵を切るようになっているのです。先に紹介した、何らかの「話型」をスタンダードにしている自治体や学校も少なくありません。

2017年10月29日、朝日新聞にもスタンダードに関する記事が掲載され、広く世間にも知られることとなりました。

<小学校で見られるスタンダードの例>

【学習について】
使うノートや、行頭から文字を何マス下げるかなどを、学年ごとに規定。それをすべての生徒で統一するように、教員にも指導する

【生活について】
・登校から下校まで、学校において目指すべきふるまいを、文字やイラストで明示
・授業中の机の上に置く物の、置き方を統一する

【持ち物について】
・筆箱に入れる鉛筆の種類、本数、その他文房具の種類を、例えば「赤鉛筆1本、青鉛筆1本、定規は透明なもの1つ」などと決める
・道具箱に入れるものについても同様に規定

スタンダードの背景には、ニーズや問題があまりに多様化しすぎた学校現場の混乱があります。ベテラン教員の大量退職に伴って、経験不足の若手の先生が増えているという現状もあります。

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