母の失踪で4人の弟の面倒を見る高3女子の選択 ヤングケアラーがSOSを出せるようになるには

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(写真はイメージです。写真:Mills / PIXTA)
「ヤングケアラー」とは、何らかの困難を抱えた家族を心配し気づかい、そこから逃れることができない子どもたちのこと。大阪・西成地区をはじめ、子育てや看護の現場でフィールドワークで知られる大阪大学教授の村上靖彦さん(専門は現象学)は、そのように考えていると言います。身体的な介護や家事労働に時間を取られ、学校に通えない子どもといったイメージが固定化しがちですが、実際には、「目で見てわかる介護・家事」をしていないヤングケラーもいます。
村上さんは、こうした社会一般のイメージと現実との乖離を危惧し、ヤングケアラー経験者へのインタビューを重ねてきました。そして、その「語り」を丁寧に分析し、当事者が抱える困難の本質、その多様さを掘り下げながら、ヤングケアラー、さらには、あらゆる子どもにとっての「居場所」の重要性を論じています。
ここでは、新刊『「ヤングケアラー」とは誰か 家族を“気づかう”子どもたちの孤立』から一部抜粋・改変し、かつてのヤングケアラーで、インタビュー当時40代の女性、大谷純さんのケースを前回記事に続いて紹介します。
大谷さんは自身が18歳のときに母親が失踪。4人の弟のケアをすることになったのでした。

弟へのケア

母親へのサポートが「母の代わり」だったのと同じように、4人の弟へのケアも、母親の代理としてである。

大谷さん:母が出ていってから、〔下の2人の弟の〕保育園の送りは私がして、迎えは〔こどもの〕里さんにしてもらって、私、夕方、学校から帰ってきて、家で作るときもあったり、ここで食べさせてもらうときもあったりしながらやってた感じですね。バイトもしたりしつつですね。
大谷さん:泊まらせてくれたりとか、あと、ご飯も一緒に作って食べようみたいにしてくれてたんで、弟らと一緒にここでご飯食べて、ときどきここで寝たりとか、寝泊まりさせてもらいながら、何とか施設も行かず。
本当は、「親がおれへんようになった」よう言わんかったのは、『施設行ったらバラバラにされるな』とか、『行きたくないな』っていうのがちょっとあったので。で、デメちゃんが後見人みたいなんで、「ちゃんと見るから」みたいなかたちで、施設も何も行かず、子どもらだけの生活が当時はできたんですね。
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