母親が失踪し妹弟と6人で暮らした18歳少女の現実 家事や学校の手続きも「母の代わり」にやった
ここでも「あんたにだけは〔お母さんが〕全部話してる」と、(実際には何も伝えていないのにもかかわらず)大谷さんに「母の代わり」を担わせている。つまり母親が失踪して不在になっているときにも、大谷さんは母へのケアを担っているのだ。
「やくざ」への返済に同伴
子どもが失踪した親の借金を返すというのもまた、(とりわけ母親が「あんたにだけは全部話してる」ことになっているがゆえに)ケアすることなのだ。不在の母親をケアするという奇妙なケアがここでは成立している。
借金の返済もまた、母親へのケアとして想定される範囲を逸脱する社会的なハンディである。この逸脱した部分でのサポートは、子どもだけで対応できるものではない。これをこどもの里の荘保さんが支えることになる。
「デメちゃんが『ついていったる』って言って」と、居場所であるこどもの里から同行支援するアウトリーチのサポートが行われている。「やくざ」への返済に同伴するという過激な同行支援である。居場所とアウトリーチが組み合わさることが、ヤングケアラーに限らず地域での親子支援では鍵になる。
「デメがしてくれて」というサポートと、「デメちゃんに付いてきてもらって」というSOSを出す力とが組み合わさって、大谷さんは生き抜いている。荘保さんは、大谷さんが必要としている部分を補い、力を発揮させる。つまり潜在的に力を持っている大谷さんを補強する。ヤングケアラーは的確なサポートを得ることで本来持っている力を発揮する。
(この記事の後編に続く)
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