ダメ男「太宰治」ずば抜けて身勝手なのにモテた訳 間抜けなことをするけど、放っておけない魅力

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ウザいパフォーマンスはさておき、そのまぎれもない才能がやがて開花し、彼は日本の文学史において大きな功績を残すことになる。

女々しさマックスの代表作『人間失格』は、夏目漱石の『こころ』の次に最も読まれた小説として輝かしい記録まで勝ち取り、日本の国境をこえて、大人になりきれない読者によって今でも愛読され続けているほどだ。その英訳はドナルド・キーン先生が手掛けていることも相まって、かなりの高評価を得ているし、英語以外にも数多くの言語に翻訳されている。

繊細さトゥー・マッチなところがあれど、やはり太宰文学の魅力は今も顕在である。

「波瀾万丈」という言葉しか思い浮かばない人生

太宰治(本名:津島修治)は1909年青森県の裕福な家庭に生まれた、いわゆる金持ちのボンボンだ。

幼いときより文学に興味を持ち、中学校に上がると志賀直哉、菊池寛、芥川龍之介などの小説を読みふけり、早くも物書きになりたいという夢が芽生える。そして、成績優秀だった彼は高校受験に合格し、津島家の名前を背負って学業に勤しむはずだったが、この時期から生活が一変。学校をサボって花柳界へ足を向けるようになり、どんどんグレて、ダメ男へと変貌し始めるのだ。

その後の人生を追っていくと、波乱万丈という言葉しか思い浮かばない。

家族にも、師匠の井伏鱒二にも多大な迷惑をかけ、薬物中毒になって、何度か自殺や無理心中を図り、二回も結婚して、複数の愛人を囲い、婚外子までもうけて……太宰治が送った自己破滅的な人生はまさにフィクションをはるかに上回るものだ。

それから、1948年6月13日に、彼は愛人・山崎富栄とともに玉川上水へ入水心中し、38歳という若さでそのドラマチックな生涯の幕を閉じた。呪われたアイドルとして、文壇もゴシップ雑誌も騒がせた彼にふさわしい終わり方だったのかもしれない。

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