ダメ男「太宰治」ずば抜けて身勝手なのにモテた訳 間抜けなことをするけど、放っておけない魅力

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昭和時代を生きた文豪たちなら決して珍しいことではないが、本人が自らさらけ出しているがゆえに、太宰治の私生活の小さなディテールまでが公開されている。

喧嘩腰で書いた手紙も、愛人に送った情熱的な恋文も全部読めるし、家族に勘当された経緯や苦しんだ病気までが、誰もが知るところとなった。さらに書き残している小説は自伝的なものが多いため、この愛人やあの愛人が作中に濃い影を落としており、正直にいうと知らなくてもよかったような出来事ですらだいたい想像がつく。

しかし、「太宰のやつ、本当にどうしようもなくダメだなぁ……」と無意識のうちにフィクションと現実を混同してしまうことがあれど、書かれている内容を全部鵜呑みにしてはいけない。

私生活をちらつかせつつも、そこにはさまざまなキャラクターがあり、実に多くの切り口が巧妙に起用されているので、太宰治先生は、ただ女をだまし続けた作家だということだけで決して片づけられない。

小説だろうが、彼について書かれた伝記や論文だろうが、何を読んでもとりあえず一つのことがはっきりと分かる。太宰治はとにかく、ものすごく、モテていたということだ。

女性への接し方が絶妙にうまい

手元にあるいくつかの文庫本を取り出して、そでに印刷されている肖像写真をしばらく見つめる。

女を書けない文豪たち イタリア人が偏愛する日本近現代文学
『女を書けない文豪たち イタリア人が偏愛する日本近現代文学』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

痩せ型で、色が白くて、やや病弱そうな雰囲気が滲む。頬に手を当てて、物思いにふけっており、どこか物憂げ、寂しげな表情を浮かべている。それはまさに、見ている相手を「私がそばにいてあげなくちゃダメなの!」という気持ちにさせて、母性本能をくすぐる典型的なポーズなのである。

個々人の好みにもよるが、私はああいうインテリふうで、不幸そうな感じがたまらなくて、デートしたい文豪ベストスリーは、やはり太宰治、芥川龍之介、中原中也に決めている。まぁ、このような趣味なので、変な男ばかりに引っかかってしまうのも納得していただけるかと思う……。

ところが、太宰治先生は、(私好みの)美形だけではなく、自らの欠点を見せつつも、女性への接し方が絶妙にうまい。私生活において本当にそうだったかどうかは残念ながら検証できないけれど、文学的には「モテるダメ男」であることは間違いない。

イザベラ・ディオニシオ 翻訳家

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Isabella Dionisio

イタリア出身。大学時代より日本文学に親しみ、2005年に来日。お茶の水女子大学大学院修士課程(比較社会文化学日本語日本文学コース)を修了後、イタリア語・英語翻訳者および翻訳コーディネーターとして活躍中。趣味はごろごろしながら本を読むこと、サルサを踊ること。近著に『悩んでもがいて、作家になった彼女たち』。

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