自衛隊の装備稼働率が防衛費増でも向上しにくい訳 装備調達の構造的欠陥を放置したままでいいのか

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そもそも、予算が足りないのではなく、コンポーネントや整備の確保を盛り込んで調達計画を策定するのが筋だろう。それを防衛省、自衛隊は怠ってきた。稼働率や維持整備費を考えずに、戦闘機や戦車などのプラットフォームを目いっぱい買うことだけを考えてきた。高い装備を買ったために整備費用を確保できないことも多い。

空自航空機の部品転用(共食い整備)件数の推移
(出所:防衛装備庁)

空自のC-2輸送機や海自のP-1哨戒機は他国の何倍も調達費・運用費が高い。維持整備費を考えればこのような高コストな装備の調達は行われなかったはずだ。また調達数(部隊数)を減らして、浮いた予算で稼働率を高めるという発想も見受けられなかった。

石破茂氏が防衛大臣の時代に各幕僚監部に主要装備の稼働率を調べさせたが、筆者の知る限り、それまで各幕僚監部がそのような調査をしたことはなかった。その調査では愕然とするほど稼働率の低い装備が多かったが、防衛省内局も各幕僚監部も問題にしなかった。例えば陸自のバイクの稼働率は3割程度にすぎなかった。2011年に派生した東日本大震災においてもそれは深刻な問題だったが、防衛省、自衛隊の対処に問題がなかったことにされ、低稼働率の対策は放置されてきた。

単に部品代を賄っても解決しない

装備の稼働率は単に部品代を賄えば解決する問題ではない。FMS(米対外有償軍事援助)などの場合、発注してもコンポーネントが届くまで何年もかかることがある。このようなサプライチェーン上の問題も存在する。

装備に欠陥がある場合もある。例えば富士通が担当しているP-1哨戒機の光学電子センサーは欧米製に比べて性能が劣るうえに、頻繁に故障する。これがP-1の稼働率が低い一因だ。それでいて調達単価は同様の欧米メーカーの2倍も高い。このようなコンポーネントの問題が複数あればそれだけ稼働率は下がる。

さらに定期修理をするメーカーへの支払い、自衛隊内の整備員の数なども関係してくる。自衛隊では充足率の低さが長年問題となっているが、今後の少子高齢化が進めば整備員の確保も問題となるだろう。さらに搭乗員の数や燃料も問題だ。仮に戦闘機100機が完全に整備されてもパイロットが10人しかいなければ、稼働率は大幅に下がる。燃料が足りなければ装備は動かせない。

それから稼働率が低くなる原因の1つは装備の経年劣化だ。生産直後の装備と、20~30年も経った装備を比べれば故障の頻度は増えてくる。このため古くなった装備は頻繁に修理が必要となるし、費用もかかる。古い部品を延々生産するためにはラインを維持しないといけないので、修理のたびのコストは高くなる。

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