東急役員が解説「東急沿線」"2023年住みやすい街" 蒲田、新綱島、鷺沼――いい所悪い所すべて検証

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次世代まちづくりの街に選ばれた「すすき野」

続いての注目スポットは、駅前ではなく、あざみ野駅からバスで約2〜3㎞行った「すすき野」です。

なぜ駅周辺でなく、このエリアが注目かといえば、東急が中心となって「nexus構想」というまちづくりを2022年からスタートさせたからです。

実は2012年に横浜市と包括連携協定を締結して、次世代郊外まちづくりをスタートさせる際、どこをモデル地区として選ぶかが議論になりました。

東急としては「第一号案件は絶対に成功させないと次に続かない」という理由で、たまプラーザ駅周辺の美しが丘1丁目〜3丁目のエリアを推しました。基本的に横浜市も同意見だったのですが、一部に「たまプラーザは比較的恵まれたエリアなので、もっと地域課題が深刻なエリアで取り組むべき」という声もありました。

しかし、駅から離れたエリアを最初のモデル地区にするには、地域課題が多すぎて、横浜市、東急とも当時の経験、実力ではとても荷が重すぎました。

ところが、10年間たまプラーザで次世代郊外まちづくりを推進していく中で、ノウハウ、経験が一定量積みあがってきたので、満を持して多摩田園都市の中でも駅から離れたエリアの活性化、再生にチャレンジすることにしました。それが「すすき野」です。

同地区は、横浜市青葉区のすすき野団地および隣接する川崎市麻生区の虹ヶ丘団地で構成されていて、ともに1970年代から当時の日本住宅公団によって開発・分譲されたマンモス団地群です。

分譲当時は多摩田園都市人気もあり、団地の大量供給に多くの一次取得希望者が殺到しました。

私はこの近くの私立中学校に通っていたのですが、自宅から自転車通学で裏道を通って帰る際、ちょっと前まで山林地帯だった場所に、あっという間に近代的な鉄筋コンクリートの建物が林立していくのを目の当たりにしました。

まだ住民がほとんど住んでいなかった頃でもあり、近代的だけど、どこか無機質で、SFに出てくる未来都市のような印象を受けたことをいまだに覚えています。

かつて栄えた「大規模団地」は正念場を迎えている

そんなマンモス団地も時が過ぎ、現在は超高齢化の波がきています。2020年には近所の「すすき野小学校」が児童数の減少によって46年間の歴史に幕を閉じて閉校となりました。つい数十年前まで「新興住宅地」と呼ばれ、もてはやされていた場所が、たった一世代で、急速に高齢者だけの街になり廃れてしまう可能性が現実化してきました。

そのような深刻な問題に直面する中で、コロナ禍で在宅でも仕事ができる若い現役層ファミリーなどに、団地のリノベーション物件や戸建て物件などに住んでもらうことを企図して「nexus構想」は活動を開始しました。

ベースとなる考え方は次世代郊外まちづくりと共通するのですが、より明確な課題が顕在化しているので、「農と食」「資源循環」「ウェルネス」といったキーワードを強調しています。これはSDGsのような理念に共鳴する人たちに関心をもってもらい、共感、共助の共同体「コモンズ」を形成していこうというものです。

プロジェクトはまだ始まったばかりです。しかし、同じような課題を抱える地域は日本中にたくさんあるので、おそらくこれから大注目を浴びる取り組みとなるに違いありません。

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