東急役員が解説「東急沿線」"2023年住みやすい街" 蒲田、新綱島、鷺沼――いい所悪い所すべて検証

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高度経済成長期に当地がベッドタウン化されてきたことにより、温泉街というイメージは希薄になり、住宅地というイメージが定着していきました。

また今後は、同地区前を走る綱島街道の向かいの「綱島駅東口駅前地区」でも市街地再開発事業が計画されており、綱島駅と新綱島駅との連動性が高まります。

元々渋谷方面、横浜方面のどちらにもアクセスしやすい立地で人気は底堅いエリアですので、駅東側が変貌を遂げることによって、さらに住みやすい、便利な街としての評価が高まることでしょう。

静かな住環境が何より魅力の「鷺沼」

次に注目したいのが「鷺沼駅」です。

田園都市線の駅の中では土地区画整理事業が早い時期に終了し、宅地化、住民定着が進んでいたこともあり、開発初期から田園都市線の急行停車駅となっていた鷺沼は、駅前も早くから賑わいがありました。

私も学生時代までを鷺沼で過ごしたのですが、実家の前には公園があり、昔はそこにかなりの数の児童たちが毎日集まって大声を出しながら遊んでいました。しかし、いつの間にか子どもたちの声は聞こえなくなり、ひっそりと静かな環境になっていました。

鷺沼駅周辺は地形的に起伏があり、駅が一番高く、周囲が低い特長があるので、駅前にさまざまな機能がコンパクトに集約されています。一方で、駅周辺は比較的古い時期に建てられた中層住宅が多く、その下にいわゆる下駄履き状に店舗が入っているスタイルのものが多くあります。

その周囲は戸建て住宅地エリアとなっており、風格のある閑静な住宅地ではあるのですが、街の新陳代謝があまり起きていません。さらに、早期に宅地化されたことから、高齢化も他の駅周辺より一足先にやってきました。

新規供給されるマンションや戸建てなどは、バス圏エリアのものが多く、バス利用で鷺沼駅を利用する駅勢圏が広いのも特長です。その分、駅前バスターミナルが常に混み合っています。

駅から離れていても「住みやすい理由」

こうした課題を解決するため、隣の横浜市で推進されている次世代郊外まちづくりを参考にして、2015年に川崎市と東急とで包括連携協定を締結しました。中でも、鷺沼駅での「鷺沼駅前第一種市街地再開発事業」は目玉のひとつです。

駅前の交通環境を改善するため、道路拡幅をするとともに、現在よりも広い交通広場をつくり、公共交通の円滑化を図ります。その空間を生み出すために、限られた敷地を最有効利用して、地上37階と20階のツインタワーにして、商業施設、住宅、ワークプレイス、市民ホール、図書館に加え、現在隣の宮前平駅にある宮前区役所の移転も計画しています。

当初は2021年度に工事着工予定でしたが、コロナ禍の影響などもあり、工事着工を3年程度遅らせて再スタートする予定です。

この機能を集約した再開発計画により、自立分散型のまちづくりが推進され、鷺沼駅勢圏のかなり広いエリアの地域課題が解決できることが期待されます。

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