「31歳NHK記者の過労死」両親がまだ納得できぬ事 調査報告書は「作られず」、沈黙する同僚たち
誰も責任をとっていない
――娘の未和さんが亡くなり、2023年で10年となります。
守さん:未和の過労死をめぐり、法的にはNHKと調停が成立しています。ですが、亡くなる前、そして亡くなった後のNHKの対応には納得がいっていません。NHKは未和の過労死の経緯をめぐって関係者の証言を充分に集めたり、問題点を洗い出すようなきちんとした調査、検証はしておらず、調査報告書も作成されていないからです。
NHK側は、労働時間を把握せず長時間労働が放置されたのは、当時、記者に適用されていた「事業場外みなし労働時間制」という勤務制度が悪かった、と短絡的に結論づけています。しかし私たちは、制度の問題だけではなかったと考えています。
亡くなって4年後の2017年に未和の死亡が公表されるまで、NHK執行部は局内への周知はおろか、経営委員会にすら報告していませんでした。今に至るまで組織として誰も責任を負わず、誰一人処分されていません。未和の過労死を「不祥事ではない」と言い切った経営幹部までいました。
私たちは、未和の過労死をこのままにしておいてほしくない、実態を明らかにして、社会のために生かすことを考えてほしいとNHKに言い続けてきました。局内で過労死が発生したのなら報道機関としてきちんと総括し、自戒や反省を込めた検証番組のような形で社会に広く伝えてほしいと要望してきたのです。
しかし、NHKが応じてくれることはありませんでした。毎年、命日の時期になると幹部の方々がわが家に来ましたが、そこでは、ただ私たちの話を黙って聞き置くという姿勢に徹していました。
そして今年の9月、第2の過労死が公表されました。しかも、未和とまったく同じ職場(首都圏放送センター)で、です。