「31歳NHK記者の過労死」両親がまだ納得できぬ事 調査報告書は「作られず」、沈黙する同僚たち

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――過労自殺をした電通の高橋まつりさんを巡っては、亡くなった翌2016年には電通の社長が引責辞任を表明しています。

恵美子さん:電通は、社長が辞任されて会社の中が変わったと聞きます。NHKには、そんなそぶりすらない。首都圏センターで未和の周囲にいた方々はどんどん昇進・栄転してゆきました。直属の上司は異動で東京を離れたら、命日でもはがき1枚、花一輪手向けません。未和が本当に哀れで、かわいそうです。このままじゃ、犬死にでしょう。

「聞ける雰囲気じゃない」

――「日放労」(NHKの職員でつくる労働組合・日本放送労働組合)や同僚たちが義憤を感じて動くことはなかったのでしょうか。

恵美子さん:未和が亡くなった後、私は苦しくてたまらず、サポートをしてほしいと組合に連絡したことがありましたが、誠意ある対応ではありませんでした。その後は、公表されるまでぱったりでした。

守さん:組合は経営側の「遺族は公表を望んでいない」という説明を鵜呑みにしていました。組合員である未和の過労死について、他の組合員にも周知せず、調査や真相究明をしようともしません。この点に関して組合としての機能を果たしているとは言いがたく、ほとんど御用組合です。当時の日放労委員長は、今日に至るまで一度も弔問に来ていません。

恵美子さん:同僚の方々も2017年の公表までは口をつぐんでいました。誰が指示をしたのか、忖度なのかはわかりませんが、局内で未和の件には触れないことになっていたみたい。未和と戦友のように近しい関係にあった友人たちですら、詳しいことを掴めていないのです。「聞ける雰囲気じゃない」って。

守さん:未和の過労死について「実はこんなことがあった」「こんなやりとりが残っている」と、資料などを含めてさまざまな情報がわが家に寄せられるようになったのは2017年の公表後のことです。

私たちは仕事で長年ブラジルに住んでおり、未和の働き方や職場の実態についてはほとんど知りませんでしたが、帰国後、労災認定も調停もすべて終わった後で、遅まきながら未和の身に何が起きていたのか、少しずつ知ることになったのです。

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印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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