「AIは心を持つのか」哲学者が積み重ねた深い議論 脳をシミュレートすれば本当に心が生じるのか?

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ただ、創造的思考はどうかと言われると、今のところ人間のほうが優れているように思います。しかし、創造もアイデアの組み合わせだということになれば、情報処理と同じとも言えます。そのうえ、現に人間と変わらない絵を描いたり、小説を書いたりするAIがすでに誕生しているので、人間とAIのどちらが優れているかは答えに窮するところです。では、AIは人間と同じ心を持つのでしょうか?

そこが議論の分かれ目になっています。これは、哲学の世界でも心の哲学という名称で研究が進んでいます。その議論のはじまりは古く、古代ギリシア以来のテーマだと言っても過言ではありません。

ルネ・デカルトの哲学

大きな展開があったのは、近世フランスの哲学者ルネ・デカルトが心身二元論を唱えてからです。心身二元論というのは、心と身体は別物だという考え方です。心、つまり意識はこの世において特別な存在で、それだけは決して疑えない、たしかなものだと証明したわけです。それが有名な「我思う、ゆえに我あり」という言葉の意味です。

デカルトは、当時すでにロボットに関する議論もしていました。「機械人間には意識がない」と言うのです。しかし、もし意識を持てば、私たちの恐れる心を持ったAIを搭載した自律型ロボットが誕生することになります。デカルトは人体を解剖までして、心の解明につとめましたが、行きつきませんでした。

ところが現代では、科学によって心を生み出せるかどうかが議論されはじめています。現代の心の哲学には、2つの代表的な考え方があります。

1つは、一元論と呼ばれるものです。たとえば、物的一元論のような世界は心も含めすべて物理的な存在だけで構成されているという考え方です。
この考え方は、物理主義と称されることもあります。物的一元論は、この世のすべてを物理学で説明できると考えるからです。

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小川 仁志 哲学者、山口大学国際総合科学部教授

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おがわ ひとし / Hitoshi Ogawa

1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後 期課程修了。専門は公共哲学。商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)という異色の経歴を持つ。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で新しいグローバル教育を牽引する傍ら、「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。また、テレビをはじめ各種メディアにて哲学の普及にも努めている。NHK・Eテレ「ロッチと子羊」では指南役を務める。
『手塚治虫マンガを哲学する 強く生きるための言葉』(リベラル社)や『ざっくりわかる8コマ哲学』 (朝日新聞出版)など、100冊以上出版している。

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