1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く
また、籠城していた13日間は理大の外に出ることはできませんでした。私は食べ物がなくパンばかり食べていたのですが、デモの参加者の一人が鶏のもも肉をみつけて、学食で唐揚げを作ったんです。
それを見て私は「美味しそうだな」と思ったのですが、デモの参加者は「この唐揚げは僕の人生で最後の食事になるかもしれない。あなたはまだ外でいくらでも食べられる」といわれました。それがとても衝撃的で、忘れられない瞬間でした。それほどまでに覚悟をして籠城していたんですね。
記憶されることの大切さ
――現地を取材していて、外国メディアも含めて、マスメディアによる報道が香港当局や中国政府に対してプレッシャーを与えることができていると感じましたか。
アメリカのCNNやBBCなど国際的に大きなメディアの記者たちは数多くいましたし、デモのライブ中継もかなり見かけました。
ただ、デモの現場でもよく討論されていましたが、現場レベルでは「報道が政府に対してプレッシャーを与えている」という実感はあまりなかったというのが正直なところです。
メディアが盛り上がって取り上げても、そのことが現場に影響を与えていたことはなかったように感じました。報道によって政府の決断が変わったかというと、結果としてそれはなかった。そういう意味では、報道は失敗に終わっているところもあるかと思います。
しかし、もう少し視点、視界を広く持つと、世界のメディアでこの問題が取り上げられるということは、世界の人々に記憶されるということでもあると思います。
「記憶される」ということは香港に残ると決めた人たち、もしくはデモに参加したことがある人たちにとってはとても有意義なことです。自分が自由を求めて戦った記録として後世に伝えることができるし、世界の人々に記憶されれば、協力者が増えて民主化への流れを作りやすくなるかもしれません。
そのことが香港に残った人たちにとってこれからの香港での活動や生活をあきらめない理由につながると思っています。
私たちは映像制作者として、やはりメディアの力、映像の力を信じています。今の香港の状況がメディアに取り上げられることによって、その存在を世界から忘れ去られることを防ぐことができる。そしてそれはそのまま、現地でも海外でも自由を求めて活動している人たちの励みになるんです。そのことを信じてこれからも取材を続けていきたいです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら