1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く

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ところが、後半になるにつれて、デモはストリートから、ロケーション(場所)に変化していきました。すでに水のように柔軟に神出鬼没に表れてデモをするという雰囲気ではなくなっていました。

それはデモ隊の若者が駐車場の4階から転落して亡くなってしまった事件がきっかけでした。いまだに真相はわかりませんが、その事件をきっかけにデモ隊の中に「復讐しなくてはならない」と怒りをあらわにする人たちが出てきたのです。

理大での籠城が発生した当時、デモは後半に差しかかっていましたが、状況はよくなっているとはいえず、学生たちも運動全体に対して悲観的になっていました。ただ、失望がありながらも、「家にじっとしていられない」と思った人たちがあの大学の建物の中にいたんです。

香港
大学に籠城している時の様子(C) Hong Kong Documentary Filmmakers

そういう意味では、失敗するとわかっていたかもしれないけど、体の方が動いてしまっていたし、わずかな希望にかけていました。民主化は確かに失敗続きでした。でも、今回は変われるかもしれない、少しは違う結果があるかもしれないと。

さらにこの世代で結果が出なくても、この運動が次の世代に何かしらの意義や意味をもたらして、次の機会に変えられるきっかけになるかもしれない。そうした希望や期待を持って立てこもっていた人たちは多くいました。

一方で、理大に籠城した学生の参加者たちの討論で、よく聞いたのは「悲観的になって行動を起こさない人たちや運動から引いて行ってしまった人たちに対して失望した」という言葉でした。デモから撤退する人もいる中、籠城した人たちは強い意志を持って運動に参加している人たちだったんです。

「自由を奪われたくない」若い世代

――学生たちの祖父母の世代は、元々自由のない環境で育って、香港に移住して自由を満喫したという感覚が強く、孫に向かってデモへの参加を辞めるように叱責しているという話も聞きました。一方で若い世代は自由を守ろうと必死になっています。

若い世代はインターネット世代なので、リアルタイムに世界中から入って来る様々な情報に影響されています。

そうした環境の中で、中国により自分たち香港人の文化が奪われてしまう、いわば「文化の侵食」ですが、そのことに対してとても敏感になっていると感じました。

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