自分の仕事を過小評価する女性が再生産される訳 人生のA面もB面も詰まった「ヒント本」を読む

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ヒオカ:男性は、どれだけ稼いだのか、どれだけステータスがあるのかを誇示したがりますが、女性は「私なんて全然です」と言って自分を押し込めています。

そこには、「幸せそうにしている女が許せない」「控えめであるべきだ」という社会の風潮があるんですね。

でもジェイミーは、「自分には本当に価値がある」ということを発信していくことによって、次世代の女性たちを変えることになると書いています。

自己卑下しないロールモデルになれ

ヒオカ:自己卑下というものは、周りにも影響を与えて、同じような女性を再生産してしまうものだと思います。だから、もっと誇っていいし、堂々と自分の意見や信念を言ってもいい、それがロールモデルになるんだということを本書を読みながら本当に感じました。

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私は、アルバイトをしながらライターをやって本を出していますが、「貧困から抜け出したいなら、真面目な安定した仕事を見つければいい」「フリーライターなんて安定を捨てている」といったコメントがつくこともあります。

そして、以前は、私自身がそういう意見に従っていたなと思いました。でも、そうした声に従っていたら、「貧困家庭出身だから、自己実現や、やりたいことを追求してはいけないのかな」と感じさせられる風潮を再生産してしまいます。

ジェイミーのように堂々と発信していくことで、次の人の選択肢が広がるのではないかなと思います。

女性の悩みが網羅されている本

伊藤:ロールモデルを目指すのは、すごく意味のあること。ただ、そうなれる人ばかりではないですよね。私は、自分がかっこいいロールモデルになれなかったとしても、頑張っている女性の足を引っ張らないぞ、ということを決めています。

『ビリーブイット』は、すべての女性の悩みが網羅されているんじゃないかという本ですね。仕事、家族、アンチとの向き合い方、自信の持ち方、不妊……悩める女友達に、「うまく言えないけど、これを読んでみて」と言って本書を渡したなら、何かしらのヒントになるのかなと思います。

ヒオカ:ジェイミー自身にすごく包容力がありますよね。ビジネス書と言えば、腕組みをした男性がいきって書いているようなイメージがありましたが(笑)、この本はそのイメージを打ち砕いてくれました。

素を晒してくれる人間味を感じられますし、読者に対して、「あなたも友人だ」と言う懐の深さや、ジェイミーの愛情深い人柄を感じる本だと思います。

(構成 泉美木蘭)

伊藤 あかり かがみよかがみ編集長

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いとう あかり / Akari Ito

2009年朝日新聞社入社。奈良、徳島で警察、高校野球、県政、災害などを記者として取材。紙面編集者を経て、2017年にミレニアル女性向けウェブ「telling,」の立ち上げにかかわる。2019年に社内の新規事業コンテストに応募、かがみよかがみ編集長に。2021年10月から2022年4月まで産休・育休をとり、一児の母。

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ヒオカ ライター

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ひおか / Hioka

1995年生まれ。地方の貧困家庭で育つ。noteで公開した自身の体験「私が"普通"と違った50のこと――貧困とは、選択肢が持てないということ」が話題を呼び、ライターの道へ。"無いものにされる痛みに想像力を"をモットーに、弱者の声を可視化する取材・執筆活動を行い、「ダイヤモンド・オンライン」(ダイヤモンド)、「現代ビジネス」(講談社)、「mi-mollet(ミモレ)」(講談社)などに寄稿。若手論客として、新聞、テレビ、ラジオにも出演。連載に『貧しても鈍さない 貧しても利する』(婦人公論.jp)がある。

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