「自分は悪くない」と正当化する人の怖すぎる心理 被害者意識が強い〈例外者〉という存在

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もっとも、そういう願望を抱いても、名家の御曹司か大金持ち、よほどの美貌か図抜けた才能の持ち主でもない限り、許されるわけがない。そこで、自分自身の願望を正当化するための理由が必要になる。

それを何に求めるかというと、ほとんどの場合自分が味わった体験や苦悩である。〈例外者〉は、自分には責任のないことで「もう十分に苦しんできたし、不自由な思いをしてきた」と感じ、「不公正に不利益をこうむったのだから、自分には特権が与えられてしかるべきだ」と考える。

何を「不公正」と感じるかは人それぞれである。容姿に恵まれなかった、貧困家庭に生まれた、病気になった、理不尽な仕打ちを受けた……など、さまざまだ。本人が不利益をこうむったと感じ、運命を恨む権利があると考えれば、それが自分は〈例外者〉だと思う口実になる。ときには、「あらゆる損害賠償を求める権利」を自分は持っているのだから、普通の人が遠慮するようなことでも実行してもいいと自己正当化する。

暴言を吐いても悪いとは思わない社長

たとえば、動悸と寝汗で眠れず、不安で気分も落ち込むため、仕事に集中できなくなったと訴え、私の外来を受診した40代の男性会社員Iさんは、心身に不調をきたした最大の原因として勤務先の中小企業の社長を挙げた。

この社長は70代で、創業者である自分が会社を大きくしたという自負があるのか、かなりワンマンらしい。毎週月曜日には〝ミーティング〟と称する集会があり、全社員に出席が義務づけられているのだが、社長が自分の言いたいことだけ延々と話す。それが2~3時間続き、しかもダメ出しがほとんどなのだという。

これだけでも、Iさんにとってはかなりのストレスで、じっと我慢してきたのだが、最近さらに耐えがたいことが増えたらしい。仕事をしている最中に、社長がぶらっとやってきて延々としゃべりまくるのだ。

おまけに、社長は「そうやろ」と同意を求めるので、「そうですね」と答えなければならない。たとえ、Iさんが違うと思っても、「そうじゃないのではないでしょうか」などと言おうものなら、「なんでや」と社長から問い詰められる。

あるときなど、社長から突然「5年後はどう考えている?」と尋ねられ、Iさんは答えに窮した。すると、社長は「答えられないのは学歴がないから」と暴言を吐き、さらに「分析できないやろ? 分析できないのも学歴がないから。俺が教えたるわ」とたたみかけた。

この暴言は、Iさんにとってかなりショックだったらしく、それ以来、さまざまな症状が出現するようになった。Iさんが何よりもストレスを感じているのは、社長が延々と一方的にしゃべりまくり、しばしば暴言を吐くくせに、自分が悪いとはみじんも思っていないように見えることだという。

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