「自分は悪くない」と正当化する人の怖すぎる心理 被害者意識が強い〈例外者〉という存在
Iさんの話を聞くと、〝辛抱料〟と割り切り、これも給料の一部と思って我慢するには、社長の一連の言動、とくに暴言は度を越している。その一因として、「これくらいは許されてもいいはず」と正当化するところが社長にあるからではないか。
この社長は、世間から見れば成功者の部類に入るが、実は子どもの頃に父親が借金を作って蒸発したとかで、母子家庭で育ち、かなりお金で苦労したらしい。そのせいか、若い頃は相当あこぎなこともしていたようで、毎週の〝ミーティング〟でも「金儲けのためなら何でもしてきた」と豪語し、同じようなことを社員に推奨するという。
そういう話が延々と続くので、法に触れるようなことまでやらされるのではないかとIさんは不安になるそうだ。それが強いストレスになり、心身のさまざまな症状が出現しているようにも見受けられる。
「裏返しの特権意識」
この社長のように、幼少期に貧しい家庭で育った人が、大人になってから金銭に異常に執着し、金儲けのためには手段を選ばず、「金にきたない」と言われるようになることは珍しくない。こういう人も〈例外者〉であり、自分がこうむったと感じている不利益に対して損害賠償請求をしたいという気持ちが非常に強いと考えられる。
もちろん、自分が〈例外者〉であることを要求する理由として挙げる体験や苦悩には、同情すべきものが多い。ただ、自分がこうむった不利益に対して損害賠償請求をしたいという気持ちがあまりにも強いせいか、「自分はこんなに不利益をこうむり、大変な目に遭ったのだから、これくらいは許されてもいいはず」と考え、自分が例外的な特権を要求することを正当化しがちである。
こうした正当化からは、「裏返しの特権意識」とでも呼ぶべきものが芽生えやすい。これは、他人が遠慮するようなこと、あるいは通常はばかられるようなことでも、実行する権利があるという思い込みにしばしばつながる。その結果、暴走することもあるが、たとえ不正を働いても、他人を傷つけても、自分が悪いとは思わない。
このように罪悪感も良心の呵責もない人は、自己正当化という病に侵されやすい。こういうタイプが最近増えているので、実に厄介だ。
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