「虐待した親」の心を開くにはどうしたらいいのか 信頼関係を築くにはまず「見ること」が重要だ

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虐待した親と児童相談所は真のコミュニケーションをとることができるのでしょうか(写真:Graphs/PIXTA)
児童相談所の児童福祉司として、そして親子関係の回復に携わるNPO法人の代表として30年間「虐待」と向き合ってきた著者は、虐待した親に対して「丁寧な説明」や「傾聴」で対応しようとしてもうまくいかないという。虐待した親と真のコミュニケーションをとるにはどうしたらいいのか(本稿は、宮口智恵『虐待したことを否定する親たち』の一部を再編集したものです)。

虐待した親に「響かない言葉」

「なんとか、問題を解決したい」「なんとか今よりよい状態にしたい」。

それは虐待した親への支援者として当然の気持ちです。その時支援者は、親に対して以下のような対応をしてしまいがちです。

① 「子どもってね、〇〇ですよね」と一般化する 
 ② 「よく頑張っているね。すごいね」と褒めるように心がける 
 ③ 十分に話を聞かずにアドバイスをする
 ④ 「また言ってるな」と取り合わないようにする
 ⑤ よくわかってもらうようにと、丁寧な説明を頻繁にする
 ⑥ 傾聴に終始する 

これらは私たちが日常的に使っている支援のスキルです。ですが、実は「親との『回路』のできない働きかけ」です。このような対応は親とのつながりを生まず、親と私たちとを遠ざけます。ここでいう「回路」とは、親と対話ができる、お互いに話を聞くことができる信頼関係といった意味です。

親のほうは、こんなふうに感じるかもしれません。

① 「うちの子は違う。そんなこと言われても……」
 ② 「褒められても、なんか裏があるとしか思えない。上から言われている、評価されているみたい」
 ③ 「それができればやっている」
 ④ 「支援者はやはり、あてにできない」
 ⑤ 「『わかりました』って言っておこう」
 ⑥ 「本当に聞いてるの。何か言ってよ、あなたはどう思っているの?」

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