「虐待した親」の心を開くにはどうしたらいいのか 信頼関係を築くにはまず「見ること」が重要だ
どんな調子かな? と相手側に視線を置くだけで、親の様子が少し見えてきます。
「前回と違って今日はすっぴん。いつもかぶっている帽子をかぶっていないな」
「汗だくになっている。慌てて来られたんだな」
「面白いデザインのTシャツを着ているな~。待合室に少し前に着いたのかな~」
そんな小さな観察から始まります。
そして次に、それについて、「あなたを見ている」ということが相手にわかるように「応答」をします。もちろん、見ているだけでも意味があるのですが、回路をつくるためには、それが相手にわかるように伝える行為が必要です。
「おはようございます、〇〇さん。今日は暑いから、ここに来るだけでも大変だったでしょう」
「あなた」をみていることを伝える
ここに来た「あなた」を見ていることを、言葉や態度で伝えるのです。「あなたを見ている」ということが、支援の根幹であることを私自身が実感した経験があります。それは、カナダで家族再統合プログラムの実践を初めて見学した時のことです。そこで私が感動したのは、スタッフの方々の参加者への態度でした。
・名前を丁寧に呼ぶ
・笑顔やまなざし
・関心を示していることを伝える、大丈夫かと聞く
これらの態度は見学者の私に対しても同様であり、「ああ、『1人の人』として尊重してもらっているな……」と温かい気持ちになりました。
折に触れて質問してくれること、心細い時に名前を呼んでくれることはなんてうれしいことなんだろう、それは存在そのものを認めているという存在承認にほかならないのだ、と実感したのです。
以前あるお母さんに、「乳児院の面会、頑張って行ってるね」と話しかけると、「乳児院に面会に行くのがつらかったけど、F先生がいつも声をかけてくれる。だから行ける。F先生がいなかったら行けなかった」と仰いました。表情が硬かったその母親は、後半は自分から他の先生にも笑顔で挨拶をされるようになり、その姿を見た以前の母親を知っている児相職員は「別人だと思った」と言われていました。
F先生はまさに、名前を呼び、笑顔で声をかける先生でした。
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