親が「ドリームキラー」の子に見えがちな問題行動 親の価値観の押し付けをしていませんか?

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私の大学で、「将来、どんな人間になりたいか」というテーマで、レポートを書かせたことがあります。その中で、ある学生が、「『金のことは心配するな』と、子どもに言える大人になりたい」と書いてきました。

名前を見ると、親の過干渉に悩んでいる学生でした。苦しんだ結果、彼がつかんだ境地なのでしょう。子どもに「金のことは心配するな」と言えるように、どんな仕事でもやっていきたいとつづった文章に、なんとも言えぬすがすがしさとたくましさを感じたものです。

親は、子どもを授かった瞬間に「親」になるわけではありません。子どもといっしょに、ゆっくりと「親になっていく存在」です。子どもにとっての親は、最初に自分の「推し」になってくれる人であり、どんなことが起きても信じていてくれるありがたい存在です。

子どもが「未来の地図」の中で、立ち止まり、後退し、回り道をしていても、親だけは信じていてくれる。つねに上機嫌で迎えてくれる。そういう存在でありたいものです。

言葉でエールを

『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

新鮮な水を注ぐように、前向きな言葉の水やりをして、子ども自身が自分をコツコツと育てていけるようにする。子を、評価や裁きの目ではなく、エールを送る目で見てファンになり、サポーターになりたいと願う。つねに子どもたちにとっての「気持ちのいい距離感」を侵すことなく、エールを送る。

例えば、本を1冊、さりげなくトイレに置いておくくらいの距離感で応援したい。私はそんなふうに考えています。毎日30秒で元気をチャージできるような、良質な言葉に出会う機会を、エールを送る側も送られる側も、持ってほしいものです。親は生まれたときにわが子を抱き留めたあのときのことを忘れずに、日々、言葉をかけていきたいですね。

ひきた よしあき コミュニケーション コンサルタント、大阪芸術大学放送学科客員教授

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Yoshiaki Hikita

早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動。幅広い業種・世代間のギャップなどを分析し、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授する。また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と支持を集める。教育WEB「Schoo」では毎回事前予約が約20,000人集まるほどの人気ぶり。著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)など。

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