ただ、はっきり言って、「成長投資枠」の実態は、金融業者にとって手数料を稼ぐための「営業推進枠」である。しかし、NISAは投資家の資産形成を後押しするための制度であって、金融機関の営業支援の為にあるわけではない。「年間の総手数料の上限は運用資産額の0.5%とする」というくらいの制限が、すべての利用枠の運用商品にあってもいいように思う。
なお、NISAの利用者・投資家には、「つみたて投資枠」と同じ商品を成長投資枠でも投資可能なのだから、そうすると効率的な運用商品を最速で1800万円までの投資上限に近づけることができることを強く意識してほしい。「成長投資枠」という、いかにも「怪しい営業臭!」のする香ばしいネーミングを金融庁があえて考えてくれたことに感謝しよう。
「新しいNISA」の利用方法3原則とは?
使い勝手が向上し、金額的なスケールも大きくなる「新しいNISA」を効率的に使うための原則は以下の3つだ。
(2)成長投資枠でもつみたてNISA枠と同じ商品に投資する
(3)家族のNISA口座も有効に使う
の3点を意識しよう。
【原則1】可能な限り大きく使う
NISA口座では運用益に対して非課税となるので、この有利さをできるだけ大きく使うように工夫したい。
例えば、所得や資産に余裕がある人の場合、上限一杯となる年間360万円にフルに投資することを考えよう。課税される収入がある場合は企業型確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)の所得控除のメリットが大きいから、優先度としてはその次になる場合が多いだろうが、できるだけ大きな額を「新しいNISA」に振り向けるといい。
サラリーマンなら手取り所得の15~20%を貯蓄・投資に
例えば、毎月30万円をNISAに積み立て投資する(つみたて枠10万円+成長投資枠20万円)。これだけ投資に振り向けると、月々の生活費が足りなくなる場合があるだろうが、その場合、銀行の預金や、他の課税される証券口座などにある資産を取り崩して支出に充てよう。すると、結果として他の口座にある資産をNISA口座に早く移動できたことになる。
なお、これまでの一般NISAやつみたてNISAで運用してきた資産は、せっかく新旧分離で「新しいNISA」と並行して運用できるので、取り崩さずにそのまま運用しているほうが得な場合が多いはずだ。
例えば、少々無理気味に大きめの金額をNISAに積み立てると、必要が生じる都度、NISA口座を部分解約して支出に充てることになるだろうが、こうした場合、なるべく残高が残るように心掛けて、NISA口座の金額を大きく保つようにすると効率がいいはずだ。
もちろん、口座からの取り崩しが癖になって投資残高が増えない状態になると好ましくないので、「取り崩しは計画的に」と申し上げておく。
ごくごく一般的なケースを想定すると、サラリーマンで手取り所得の15〜20%、フリーランスで25〜30%くらいを(企業型DCやiDeCo、NISA全てを合計していい)貯蓄・投資に回していると、現役時代の支出と老後の支出とのバランスが取れる計算になる場合が多いことを付記しておく(両者の差の主な原因は厚生年金加入の有無だ)。
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