資本主義が静かに衰退を始めていると言えるワケ 「世界経済の3つの謎」をどう考えばいいのか

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なぜ先進国では低成長で不況なのに高インフレとなったのか。新型コロナウイルスだけのせいではない(写真:ブルームバーグ)

資本主義は崩壊しないが、今、静かに衰退を始めている。

「近代資本主義が終わった」と歴史的に認識されるのは、22世紀かもしれない。だがそのとき、「衰退が始まったのは21世紀初頭からだった」と明らかになるだろう。

「近代資本主義の終焉」でとらえる「世界経済3つの謎」

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なぜ、資本主義が衰退を始めていると言い切れるのか。それは、そう考えれば、現在の経済的な常識、経済学では説明できないことの多くが、一貫したストーリーとして描くことができるからだ。

現在、世界経済は3つの大きな謎に包まれている。

第1に、2008年の世界金融危機(リーマンショック)後、長期停滞論が台頭してきた。先進国の成長経済は終わってしまったのか。21世紀に入って、なぜ急に成長が終わってしまったのか。これが第1の謎である。

第2の謎は、なぜ急にインフレーションが起きたのか、ということだ。
先進国経済は、低成長かつ不況でありながら、インフレーションが40年ぶりの水準まで高まっている。不況にもかかわらず、賃金は上昇している。失業率は低いままである。なぜ、低成長かつ不況なのに、インフレーションが起きているのか。賃金が上昇し、失業率が低いのはなぜか。これが第2の謎である。

第3は、格差拡大の謎である。1970年代までは、格差といえば南北問題であり、先進国と発展途上国の所得格差の拡大であった。経済理論では、途上国が安価な労働力で生産を拡大し、自由貿易が行われれば、キャッチアップがすぐに実現するはずであった。

実際には、そうはならなかった。20世紀末には、国家間の格差が理論と異なり現実には解消されないことが、開発経済学における最大の謎であった。ところが、21世紀になると、多くの途上国が著しい経済成長を遂げ、新興国と呼ばれるようになった。突然、21世紀にはキャッチアップが実現し、謎でなくなった。その一方で、1973年のオイルショック以降、国内の格差が拡大を始め、21世紀にはその差を急激に広げてきた。

なぜ、21世紀になって、20世紀には起こりえないと思われていた国家間の経済格差が急に縮小し、一方で、1973年以降、国内の格差が急激に拡大したのか。これが第3の謎である。

これらは、近代資本主義が終わろうとしている、ととらえれば、構造的に説明できる。

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