巨大中国が「台湾侵攻」に踏み出す決定的理由 「ロシア暴走」の教訓は覇権国争いに生きるのか
そこで、ソ連と協力するかしないかで路線が分かれて、ソ連と協力するという人たちが中国共産党になった。本当はソ連と協力なんかしたくないんですよ。中国は中国なんだから。だけど、やむを得ず、共産党という選択をしたと思うわけ。共産党って、モスクワの手下になることですからね。でも、手下になってもいいことが一つもなかったので、中ソ論争の結果、早々とけんか別れしたということです。
その中ソ論争の結果、中国は共産主義だけど、中国というものになった。ここで今日の中国の基本ができたわけです。その後、アメリカや西側世界との関係をどうするかについては、一応協力するという選択をして改革開放になり、ソ連が解体したあとも前進を続け、今日の社会主義市場経済の巨大な中国になった。
大澤:その転換はうまくいきましたね。
橋爪:大成功です。アメリカをうまくだましたんです。いかにも民主主義になりそうなリップサービスをしておきながら、そのつもりは全然なかった。科学技術も資本も全部欲しいものは手に入れた。いよいよ中国を中心に世界を動かしますからねという話になってきた。それで今、アメリカも世界もびっくりしているという状態なのであって、負け惜しみでけんかを売っているロシアとは話が違うんですよ。
大澤:なるほど。いまや中国はアメリカと競る軍事大国ですからね。
橋爪:中国の場合は、通常戦力で勝てますから、核兵器を使う必要がない。核兵器は念のため奥の手にとってあればいいので、通常戦力でやるつもりでしょう。戦争の勝ち負けとはフェアな問題なのであって、戦争で勝って台湾が取られてしまえば、国際社会はこれを認めるしかない。これは主権が侵されたというウクライナとはちょっと違うと思います。
中国が覇権国となるカギは「台湾」
大澤:今は、ロシアのウクライナ侵略に対して、直接軍事行動はしなくても、西側諸国やアメリカの圧倒的なウクライナ応援がありますね。もし中国が台湾に侵略したとき、実際にアメリカ軍が動くのかどうかが常に話題になっているわけですが、どうなんでしょうか。
というのは、今回のロシアとウクライナの戦争が長引いていて、いろいろ応援はしているものの、やっぱりどこかで妥協しようよという感じが、ヨーロッパやアメリカで出てきています。あまりにもコストが大きいし、ロシアからの石油・天然ガスの禁輸も非常に負担が大きい。この理不尽な戦争を仕掛けられたウクライナに関してでさえ、そうなるんです。
まして、中国の台湾侵略に関してはどうなるか。ヨーロッパの人はどっちでもいいやみたいなところもあるでしょう。ウクライナは公式に独立の主権国家でしたけれど、一応中国に関しては「台湾は一つの中国」という建前もあります。そういう中で台湾が侵略されたとき、果たして大きなコストをかけて台湾を応援しようと西側諸国が思うのかどうか。それはかなり微妙な感じがします。その辺の実際上の見通しを橋爪さんにお聞きしたいんですが。