平社員がトップに直メール!すごい金融機関 住宅金融支援機構に学ぶ「現場力」の高め方

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遠藤:動画付きメールの配信だけでなく、現場の職員との対話も非常に重視されているようですね。

宍戸:ええ、現場力を鍛えるために、まず現場の職員たちと、直接話すことから始めました。1年目で本店・支店を含めて約450人と面談をしたところ、ある「問題」が見えてきたのです。

現場の職員450人と面談から見えたもの

遠藤 功(えんどう いさお)
早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長。早稲田大学商学部卒業後、三菱電機、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て現職。早稲田大学ビジネススクールでは、経営戦略論、オペレーション戦略論を担当し、現場力の実践的研究を行っている。 また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。

遠藤:どういった「問題」が見えてきたのですか?

宍戸:金融機関の場合、往々にして支店というのは、本店のいろいろな部署から、新たな通達や指示がどんどん下りてくるから、その対応に翻弄されがちです。その結果、自分なりに考えて「仕事」をするというより、本店から言われるままに「作業」をする感じになる。それは私たちにも当てはまると感じました。

遠藤:支店への通達や指示の量は、本来、本店が全体を調整するべきだと思いますが、それがなかったわけですね。

宍戸:通達や指示を出す本店側には多くの部門があり、部門ごとの縦割りで、しかも自分たちの都合で出すものしか見えてなかった。そういう組織の矛盾は、通達を受ける支店現場のほうが、とてもよく見えていたのです。

遠藤:なるほど。そんな現場が「変わってきたな」と、宍戸理事長が手応えを感じられたのはどんな出来事ですか?

宍戸:まずは現場レベルで、勉強会を週1回開いてほしいとお願いしました。職員同士で不足している「対話の場」を提供するためです。でも、口には出さないものの、みんな、最初は嫌な顔をするわけですよ。

遠藤:それは仕方ないことですね。

宍戸:「現場力ミーティング」と称して、CS(顧客満足度)やコンプライアンスなど、毎回テーマを変えてミーティングを続けていると、どのテーマも互いにつながっていて、最終的にはお客様のためにいい仕事をするための勉強会だと、職員たちが気づき始めたのです。

遠藤:すると、「やらされ感」がなくなってきたわけですね。

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