豪傑ぞろいだった戦国武将と植物には意外な関係があった。戦国武将といえば勇猛で植物を愛するような繊細な神経はないように感じられるが、実は、彼らは、予想外に植物をめで、観察し、役立てていた。
たとえば、戦国武将たちの紋章には植物が多くモチーフとなっていることに、お気づきだろうか。彼ら戦国武将がいかに植物を愛したか。その一端を、新刊『徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか』を上梓した静岡大学大学院教授、稲垣栄洋氏に解説していただいた。
戦国武将たちと植物の意外な関係を解き明かしているのが、私が今回上梓した『徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか』である。
たとえば、西洋の紋章のモチーフというと、ワシやライオンやドラゴンなど、いかにも強そうな生きものが多い。
だが、日本の戦国武将の家紋には、道端の小さな雑草などが多く使われている。たとえば、田畑に生えるカタバミやオモダカ、別名「貧乏草」のナズナ、可憐なナデシコなどなど。徳川家でさえ、地味で目立たないフタバアオイを家紋のモチーフにしている。
これはどうしたことだろう。
西洋でも植物が紋章のモチーフになることはあるが、ルイ王家はユリの花、フランス王家はアヤメの花、イギリス王家ではバラの花だ。どれも高貴で華麗な植物である。
それに比べると、日本の武将たちの紋章は、ずいぶん地味でつましくはないだろうか。もっと、強そうな生き物をモチーフにしてもよかったのでは、と思ってしまう。
実は、戦国武将たちが、好んで植物をモチーフにしたのには、それなりの理由があったのだという。
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