戦いにおけるすべての活動を自律化させることの倫理的問題は国際的に議論されているが、技術的には可能という現実は直視しなければならない。すなわち、わが国もAIが将来の戦いを変えうるとの視点に立ち、組織全体へのAIの実装について考慮する必要がある。
考えるべき「AI-Ready」
わが国では年末の戦略3文書改訂が大詰めを迎え、主要装備品の取得に関する議論が活発だ。しかし、ウクライナ侵攻の例に見るとおり、併せて考えるべきはそれら先進技術等をいかに組織全体に実装するかである。
これまで述べたとおりAIは他の先進技術等との組み合わせにより将来の戦いを変えうる。諸外国の動向を踏まえると、将来的にAIをスタンド・オフ防衛能力等の7つの主要な防衛能力・機能に実装することについての検討が求められよう。
さらに、アメリカが同盟国と統合抑止の態勢を構築するため、同盟国に「AI-Ready」を求める可能性があることも考慮する必要がある。NSCAIの報告書では、アメリカと同盟国とのAI適応度ギャップが相互運用性と同盟の強靱性に影響を与えかねないと指摘している。
よって、わが国もアメリカやイギリスの取り組みを参考に、「AI-Ready」な防衛力にするための検討を進めなければならない。「AI-Ready」に向けた取り組みはまた、AIを実装するための基盤造り、すなわち防衛力の中核となる自衛隊の組織変革にも及びうる。
「AI-Ready」化には、組織が扱う情報をデジタル化し、機械判読可能なデータベースとする取り組みが必要だ。また、AIが処理した分析・評価結果を意思決定に活用できる組織構造と文化を築くことが求められる。そのため、まずはAIをどのように防衛力に実装するか、そのために組織をどのように変革するかという明確なビジョンを持つことが重要だ。
先進技術等を防衛力に実装する取り組みは、主要装備品や予算の獲得に比べて目立たないかもしれない。しかしながら、この取り組みが装備品の取得と同じかそれ以上に重要であることは、すでにウクライナ侵攻が実証している。
(車田 秀一:アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)/地経学研究所客員研究員)
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