ロシア軍の苦戦が映す先進技術「実装」の重い威力 AIが将来の戦争を変えうる中で求められる防衛力

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アメリカをはじめとした西側諸国は、そのような組織文化的課題を克服し、先進技術等を実装して将来の戦いに備えるために革新的な取り組みを進めている。アメリカ国防総省は2018年に「国防イノベーションユニット(DIU)」を創設し、民間先進技術の迅速な軍への導入及び実用化を促進している。DIUは問題特定から試作品の契約締結までを90日以内で行うことを目標としている。

AIは将来の戦争を変えうるか

アメリカ人工知能安全保障委員会(NSCAI)が2021年に提出した最終報告書は、現代戦で使われる先進技術等がAIにより強化される可能性を示唆している。大量のデータをマシンスピードで処理するAIがサイバー攻撃、ディープフェイクを用いた情報作戦、ドローンのスウォーム(群)やミサイル攻撃に活用された場合、AIの支援なしでは防御すらできなくなると同報告書は警鐘を鳴らす。

これまで述べたAIの活用例を組み合わせるだけでも、将来的にはAI搭載ドローン群を活用した

① ISR活動
② 収集情報の分析・評価
③ 攻撃

が想定できる。つまり、いわゆるOODAループと呼ばれる意思決定サイクルのすべてにAIを組み込むことが可能となろう。

その将来は現実に迫っており、アメリカは中国の動向に注目している。アメリカ国防総省は2022年11月に中国の軍事力に関する報告書を発表した。その中でアメリカ国防総省は、中国が潜在的な敵に対する意思決定の優越、すなわち速度と質を向上させるための技術としてAIを重視していることを指摘する。

中国はまた、ミサイル誘導、目標探知・識別、自律システムの支援を含む、AIのさまざまな応用を研究しているという。さらに、同報告書は中国がAIとドローンを組み合わせた群攻撃を行う能力の獲得を目指していることも明らかにしている。

アメリカとイギリスは、AIが他の先進技術等を組み合わせることにより将来の戦い方を変えうると認識し、国防AI戦略と国防データ戦略を作成した。両国は戦略に基づきAIとその運用基盤となるデジタルインフラの開発・導入を進めている。これらの取り組みを通じ、両国は組織全体にAIを実装可能なデータ駆動型組織、すなわち「AI-Ready」な国防組織の確立を目指しているという。

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