森保監督と吉田主将が帰国会見で見せた一体感 カタールW杯で日本代表を率いた2人は何を語ったか

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自身の去就は未定で、代表引退もささやかれる中、後輩たちに向けてエールを送っていたのではないでしょうか。主将という重責を全うした自分の仕事を語るより、後輩たちへのエールを優先させる。今回のチームだけでなく、過去と未来も含めて日本代表の進化を考えている様子がうかがえますし、歴史の長い組織にはこういうタイプのリーダーが必要でしょう。

森保監督は「最後に選手やスタッフにどんなことを伝えたのか」という質問に、「今後は選手個々が個の能力を上げることが、日本の強化にいちばんつながると思うので、より高いレベルでプレーすること、そしてワールドカップ基準、世界で勝つために何をすればいいかを常に持ち続けて成長していってほしいということを伝えて終わりました」と語りました。

これは今大会で日本に足りなかったところをすぐに分析したうえでの言葉であり、「選手たちのために悔しさが鮮明に残るタイミングで伝えたかった」のではないでしょうか。

今大会の一体感は次回に持ち越す

しかし、組織を重んじる森保監督は、「個の強さももちろんですが、チームの団結力、一体感、つながる力は日本の良さだと思うので、そこは忘れないように持ち続けてほしいとは伝えました」と言葉を続けたのです。

この言葉から推察されるのは、「今大会の一体感を忘れないでほしい」「この一体感は次の大会以降も続けていく」という意図。それぞれの所属チームに戻っても、今大会で培った一体感を失ってはダメであり、「別々の場所にいても保てるようにしていこう」というメッセージのようにも思えました。これをビジネスシーンに置き換えると、プロジェクトが終わったとき、リーダーが各部署に戻る社員たちに「自分の部署に戻っても、この一体感は保っていこう」と声をかけているのと近いように見えます。

同じ質問に吉田主将は、「ほとんどの選手が20代で、そんな若くして自分の国を背負って仕事ができるなんてめったにないことだと思うので。しかも自分の好きなサッカーで。本当に誇り高き仕事だと思っています。なのでみんなにも『こんなにいい仕事はないよ』と伝えました」とコメント。悔しさ、怒り、ふがいなさなどが頭を覆うタイミングで、視点を変え、前を向かせるような言葉をかけられるリーダーが慕われるのは当然でしょう。

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