この学園内で起こる殺人事件にウェンズデーは関与するどころか、むしろ解決するため奔走していきます。その背景に家族の存在があり、大女優のキャサリン・ゼタ=ジョーンズが母モーティシアを、ヒスパニック系のルイス・ガスマンが父ゴメズを演じて、アダムス一家の顔も本筋のミステリー事件にしっかり絡んできます。ただし、映画のイメージが強ければ強いほど、随分と恰幅のいい今回のゴメズに違和感は持ちそうです。外見の印象を変えたのは理由があり、これについては後段で説明します。
本家のテーマ曲をオマージュして指を2回鳴らす合図が話に組み込まれるなど、元のファンの期待を裏切らない配慮もあります。コメディアン俳優のフレッド・アーミセンが演じる愛すべき変人フェスタ―おじさんや器用に動き回るハンドも登場します。人の右手だけの姿のハンドはウェンズデーの相棒となって、シャーロック・ホームズのワトソン博士的な役回りでキャラクター性に磨きをかけ、準主役のような存在感があります。
人種、毒親問題も盛る学園ミステリー
監督/製作総指揮としてアダムス・ファミリーファンと言われるダーク・ファンタジー界の巨匠ティム・バートンが参加し、世界観はそう崩されてはいないものの、話が進めば進むほど、まったく別の作品に寄せているようにも感じます。たとえば、派閥に分かれた学園生活はハリー・ポッターのような印象さえあり、また時にウェンズデーは「クイーンズ・ギャンビット」のベス・ハーモンと似た孤高の天才少女のようにも見えます。
ウェンズデーはルームメイトで人狼女子のイーニッド(エマ・マイヤーズ)から「友達だから頼まれてもいないことをするのよ!」と言われながら、徐々に心を開いて友情を育んだり、半人半魚のセイレーンで学園の女王ビアンカ(ジョイ・サンデー)にライバル意識を持たれたり、そして街のコーヒーショップで働く人間のタイラー(ハンター・ドゥーハン)と芸術家肌の学友ゼイヴィア(パーシー・ハインズ・ホワイト)と恋の三角関係もあったり。うっかりウェンズデーが超越したアダムス一家であることを忘れてしまうような青春物語が盛り込まれています。
ある意味、忘れてしまっていいのです。アダムス一家が登場する新しい学園ミステリーとして割り切ると、考察系ドラマとして楽しめます。超常現象の力を借りながら徹底追求するウェンズデーの推理は真犯人に近づいていき、配役がヒントになるラスボスも現れます。
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