Netflix化した「アダムス・ファミリー」世界最強説 学園ミステリー「ウェンズデー」ぶっちぎり1位

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Netflix化したアダムス・ファミリーは人種差別や親子問題にも触れた内容になる(写真:Netflix)

Netflix色も大盛りです。先の父ゴメズをはじめアダムス一家がヒスパニック系であることを強めた理由は殺人事件の裏に人種差別問題が絡んでいるからです。アメリカの白人主義歴史を象徴する清教徒一団ピルグリム・ファーザーズの存在を批判し、魔女扱いされたのがウェンズデーの祖先というストーリーを作り出しています。

そして親子問題にも敏感です。母モーティシアとウェンズデーの関係性に思春期特有の確執を生み出し、ほか同級生についても支配欲のある毒親を持つ10代女子の悩みにフォーカスしています。今どきドラマの人気要素として押さえているように思います。

TikTokでバズるダンスシーン

狙いどおりか、11月23日から全世界配信された1週間後のNetflix独自集計で英語TV番組のぶっちぎり1位を獲得しました。2週目には累計視聴時間7億5252万時間に達し、換算すると世界の約1億1500万世帯で視聴されたことになります。Netflixの英語のTV番組の歴代人気TOP10にランクインし、「ストレンジャー・シングス 未知の世界 4」「ダーマー: モンスター: ジェフリー・ダーマーの物語」に次ぐ3位に位置づけています。

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TikTokではウェンズデーが学園パーティーで踊るシーンやそれをまねたダンスが拡散され、人気を余計に押し上げています。「#WednesdayAddams」のハッシュタグがTikTok上で120億回以上再生されたこともNetflixの発表によってわかりました。推測にすぎませんが、ダンス要素を入れたのも意図的でしょう。若者をターゲットとした作品ですから、マーケティング的に外せません。

もともと1937年にチャールズ・アダムス作の1コマ漫画から始まったといわれるアダムス・ファミリーは、TVシリーズに映画、近年のブロードウェイミュージカルなどに展開され、日本ではホンダ・オデッセイのCMキャラクターに起用されたこともありました。いわゆるIP(Intellectual Property=知的財産)ビジネスの成功例です。強固で独自性のある世界観やキャラクター性があるからこそ、時代や国境を超えてNetflixでスピンオフ作としてドラマ化されたのは当然の流れといえます。

Netflix化したアダムス・ファミリーからIPビジネス視点で1つ学べることもあります。アレンジの好みが分かれることを承知のうえで、Netflixユーザーが好むポリコレ要素や市場トレンドに寄せた大胆さが成功につながったと分析しています。商業性の度合いが巧みなのです。

そのうえでキャラクターが新たに生きる道を作り出しています。今回のミステリー事件は完全解決しますが、シーズン2への布石を残して着地しています。すでにウェンズデーが探偵コナンのように見えて仕方がありません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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