「皆はたくさんの会社を受けていたんですが、私は逆に1社に絞って就職試験を受けることにしました。旅費代かかるのが嫌だったので」
なおにゃんさんが受けた出版社の倍率は600倍だった。1社に絞るにはあまりにも高い倍率だ。
まず会社について徹底的に調べた。どのような本が発売されて、本屋でどのように扱われているかも把握した。おそらく出版社で働いている人よりも詳しくなった。
「それで合格内定もらえました。ギャンブル的要素はありましたけど、やり方としては間違ってなかったと思います。
ただ、受かっただけなのに、
『自分ってすごい人間なのかも?』
って勘違いしてしまいました。これが本当にダメでした」
上司につらく当たられ、うつと適応障害に
入社した後に、自分が出版社の仕事に向いていないことに気がついた。
「協調性がない」
「スケジュール管理ができない」
「マルチタスクが全くできない」
複数の事案が重なると胸がドキドキしてしまう。
ただそれでも時間をかけて仕事に慣れていけば良かったが、配属された出版部の上司はなおにゃんさんにきつく当たった。
「とにかく常に不機嫌でムスッとしてるんです。いつもネチネチ難癖をつけられました。私が協調性がなくてすごくマイペースだったのが気に入らなかったんだと思います。急に、10冊くらいビジネス書を渡されて、仕事以外の時間で読んでレポート書いてこいって命令されたり。
『みんな、あんたのこと使い物にならないって言ってるよ』
とか言うんですよ。1年目で、上の人の評価もほしい時だし怯えるじゃないですか。今だったらパワハラだと訴えるかもしれませんが、当時はそんな知識もなくてひたすら耐えました」
会社でのストレスを誰にも相談することはできず、1人で抱え込むようになった。
数少ない友人に相談すると、
「心療内科に行ってみたら?」
とアドバイスされた。
「アドバイスを受けるまで、心の病気に対する意識が全くなくて、
『あ、こういう時は病院に行くものなんだ』
ってはじめて気が付きました」
心療内科の診察を受けると、うつと適応障害と診断された。医者のすすめにより、会社を休職することになった。
「自宅療養することになりました。でも急に休みましょうって言われても、何をしたらいいかわかりません。とにかく寝て、薬飲んで、散歩とかしてましたけど……。
『せっかく望んでいた出版社で働けるようになったのに、1年目で離脱しちゃってこれからどうなるんだろう? 休んでいる間に私の居場所なくなってしまうんじゃないだろうか?』
と、どんどん不安になってくるんです。今思えばもっとのんびり休めばよかったと思うんですけど。結局3カ月で復職しました。正直、病気が治ってるという実感はなかったです」
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