復職の当日は、恥ずかしいという気持ちもあり、そっと仕事に戻りたかった。しかし上司は、なおにゃんさんを呼びつけた。
「みんなに迷惑かけて休んでたんだから、今日の朝会で『これからは頑張ります』って挨拶しなさい」
と指示した。
「グワッと怒りの気持ちが上がってきました。『私が病んだのって、あなたのせいもあるのに、全く自覚ないんだ』
そう思うと、許せませんでした。朝会が始まる前に、トイレに閉じこもりました」
よその部署の人が呼びに来てくれるまで、2時間トイレに閉じこもった。
結局、部署を変えてもらうことになった。
編集部から広報部への異動になった。
「なんか私、本当になんにも喋れなくなっちゃって……。会社に行って、ずっと黙って席に座ってました」
新しい部署では、腫れ物のような存在になってしまった。
「あの、今日の新聞読んでもらって、なんかこうちょっと会社に関わることがあったら線引いてくれる? もしあったら教えて」
と、上司は仕事とも言えないような仕事を頼んだ。
「そんなのすぐに終わっちゃいますよね。それからは、とにかく何もすることがないんです。パソコンで『あいうえおあいうえおあいうえおあいうえおあいうえおあいうえお』ってずっと打って、それを全部消して……。誰とも一言も話さず、ただ時間が過ぎるのを待つだけ。そんな無意味なことをずっとしてました」
1年休養後、作家の道を志すように
そんな状況でしばらく働いたのだが、やはり無理が祟って2度目の休職に入った。
「あ、もう私の人生終わったな、って思いました」
今回の休職はしっかりと1年休んだ。
最初のうちは本当に家に引きこもって、2~3日に1度コンビニに行って食料を買いだめして、日がなネットで無料動画を眺めて過ごした。
春になって暖かくなると、少しずつ体調が良くなってきた。休職の時間を自分が元気になるために使おうと思うようになった。
それからは国内を旅行したり、ベトナムへ海外旅行に行ったりした。
「もう会社で働くのは無理だって思いました。そこで次は何をしたらいいんだろうって考えました。
『本が好き』って気持ちは本当。でも編集者にはなれなかった。だったら作家になろう!!と思いました」
夏が過ぎた頃に、児童書用の話を書き始めた。10本ほど書いた。
「誰かに見てもらわないと……」
と思い、出版社に持ち込みしたいと電話をしたが、ガチャ切りされることが多かった。
そもそも持ち込みを受け付けていない会社がほとんどだった。
「何の実績もないってほんとつらいなって思いました。虚しい時代でした。
そんな折、自分が編集者をしていた時に担当した絵本作家さんに、何の気なしに原稿を送って読んでもらいました」
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