うつで2回休職した彼女が開き直って掴んだ天職 出版社→絵本作家→なおにゃんが歩んできた半生

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中学に進級しても変わらず勉強を頑張っていた。ただ、学校内の権力構造は大きく変わってしまった。

「不良、やんちゃな子が多かったんですね。それにすごい戸惑いました。ペンケースを刃物で切られたり、せっかく作った美術の作品を壊されたり、容姿のことでからかわれたり。すごく傷つきました。クラスではイジメがあって、やめてほしかったんだけど、仕返しされることが怖くて何も言えませんでした。自分がすごく卑怯な人間に思えてつらかったです。中学校3年の終わりの頃は、クラスに入るのが嫌で保健室で勉強することが多くなりました」

性格もすごく暗くなり、人間不信になっていった。惨めだった。

それでも「勉強ができる」という部分だけは保ちたかった。

「ガリ勉で少なくとも勉強だけはできたから、クラスメイトが『ここ、教えて』とか声をかけてくれたりしたんですよね。それが嬉しくて、唯一のアイデンティティで、自分には勉強しかないって感じだったんです。そのために本当にガリ勉しました。だけど高校受験、第1志望の高校に落ちちゃったんです……」

入試の前には

「なおちゃんなら、絶対に受かるよ!!」

と周りに言われていた第1志望の県立高校に不合格。第2希望の私立高校に通うことになった。

「プライドがボロボロ崩壊していくのを感じました。勉強できるアピールしてたくせに、落ちて……。本当に惨めで恥ずかしかったです。しかも通った高校は、ちょっと特殊な学校だったんです」

1学年13クラスあるマンモス校だった。テストの成績は廊下に貼り出され、テストの順位でクラス分けされた。

成績優秀のクラスはピカピカの新しい校舎、成績が振るわないクラスはボロボロのプレハブの校舎、とわかりやすく格差がつけられていた。さらに下のクラスに落ちると、学費も上がっていくという徹底ぶりだった。

「そういう学校にいたら、どうしても勉強至上主義になります。私は上位のクラスにいましたけど、どうしても心の奥底では下位のクラスの人を見下すようになっていました。本当に嫌な人間でした……」

(イラスト:なおにゃん)

外見の劣等感から極端にオシャレするように

中学時代にはじまった外見の劣等感もさらに強くなった。

「外見が悪いといじめられるんだ」

という意識が強くなって、極端にオシャレをするようになってしまった。

「厚底のローファーとかわざわざ原宿に行って買ってましたね。髪の毛を縦ロールに巻いて、リボンのカチューシャをつけて、制服のスカートの下からレースを出してちょっとひらひらさせたり、制服をアレンジして着ていました。周りからは奇異な目で見られていたんだけど、可愛いと思える格好をしている自分が嬉しくて。

体育の授業も私だけブラウスを着て、お姫様みたいな格好で授業受けてました。そんな格好してるからすごく浮いてしまって、誰もパスをくれなくて……」

学校では化粧禁止だったが、化粧をしないと人前に出られなかった。

先生には再三注意されたが、それでも化粧をして学校に通った。

「特にマスカラが好きで。マスカラやめるか、学校辞めるか、悩んだくらい。本当にキレイになりたかったんです……」

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